「異性の友人」も恋人に入れている?

出生動向基本調査の数字の切り取り方にも問題があります。世間には「何がなんでも、今の若者は草食であってくれないと困る」という考えの方がいるもので、そうした方は「恋人がいる」という数字だけではなく、そこに「異性の友人がいる」という数字を加算して、「恋人がいる+異性の友人がいる」の合計を「恋愛している人」という定義にしています。

男性と女性がテーブルの上で手を重なる
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「異性の友人」というのはあくまで「友人」であって「恋人」ではないし、大体において告白をした際に「良い友人でいましょう」と返された場合、それは拒絶と同義です。そもそも単なる友人のことを交際している(付き合っている彼氏や彼女)と脳内変換してしまうようなら、それはもうすばらしく純情な人か、あるいは、ストーカー的思考を持った人ではないのかと思います。

1980年代、「恋人あり人口」は男性の方が多いのですが、この当時いわれた言葉が「アッシー・メッシー・みつぐくん」でした。当人は彼氏気分だったかもしれませんが、それは付き合っていたうちには入らないのです。

男女間で10ポイントも差がつく理由

さて、「恋人がいる率」のグラフをご覧になって、何か違和感を覚えた人もいると思います。男女で「恋人がいる率」に10ポイントもの差があることです。1982年こそほぼ男女同率でしたが、1987年以降はほぼ女性の「恋人いる率」がいつも男性より高くなっています。

これは、決して、既婚者にだまされて不倫交際をしている女性が多いとか、男性の二股交際が多いということを意味するのではありません。もちろん、そうした事例も中にはあるでしょうが、この男女の率の差は、そもそものこの年代の未婚男女の人口差によります。

2015年の国勢調査によれば、20~34歳までの未婚男女は、男性の方が約99万人も多いのです。20~50代までに拡大すれば、未婚男性が女性より300万人も多い「未婚の男余り現象」といいます。

これは、元来男児の方が出生数が多いことによります。それでも昔は男女比率がほぼ同じだったのは、女児に比べて男児の方が乳幼児死亡率が高かったからです。しかし、医療の発達で乳幼児死亡率は大幅に改善されました。よって、生まれた男児はそのまま成人していくため、結果的に人口動態的には、「男余り」が発生します。これは日本だけではありません。アメリカでも900万人、中国では3000万人以上、インドに至っては5000万人もの未婚男性が余っています。そうした人口動態により、男性は女性より恋愛する機会は少なくなります。