婚姻届と離婚届のオンライン化が検討されている。これまで3万件以上の相談を受けてきた夫婦問題研究家の岡野あつこさんは「婚姻届を出しやすくなると、結婚までのプロセスがおろそかになりやすい。結婚の手順を慎重に進めなかったことが離婚の原因になった夫婦もいる」という――。
手書きの離婚届は提出までに手間がかかる
政府は、婚姻届と離婚届の押印廃止とオンライン化を検討している。これにより、日本の結婚や離婚はどう変わっていくのだろうか。
仮に押印が廃止になり、オンライン化が進んだ場合、まず懸念されるのは離婚件数の増加だろう。例えばデンマークでは2013年に離婚のオンライン化を導入したところ、離婚件数は増加。婚姻届を提出した夫婦の約半数に達したことが社会問題に発展したという。これと同じことが日本でも起こるのではないかという不安の声もある。
たしかに、現在の離婚届の提出には当事者2名と証人2名が署名と押印をしなければならず、手間がかかるのは事実。離婚に対する精神的なプレッシャーや自分の判断への迷いに加え、面倒な事務作業が存在することで離婚届を提出するハードルの高さを感じるケースもあるかもしれない。その点、オンライン化が普及すれば、ネット環境が整っていればいつでもどこでも離婚届を提出できるので、今より手軽に離婚ができることになる。
不幸な結婚生活を長引かせるよりは、早く提出できたほうがいい
だが、離婚の手続きを簡略化することが、デメリットとは言い切れない側面もある。というのも、パートナーのDVや度重なる浮気、借金などによる現状が不幸と思える結婚生活であれば、離婚が正式に決まるまでの労力と時間は最小限に抑えたいもの。いたずらに不幸な結婚生活を長引かせるよりは、「幸せを目指すための離婚」ととらえ、人生をやり直すチャンスを早く、確実に手にするほうが望ましい場合もあるからだ。
もちろん、だからといって安易に離婚を決断するのではなく、パートナーとの関係を良好なものに修復していくためにお互いが努力することが大前提。そのうえで、難しいようなら少しでも早く次の幸せをつかむために“前向きな離婚”に踏み切るという選択肢もある。