恋愛強者による「時間差一夫多妻制」が起きている

そして、これは自由恋愛になればなるほど、格差が広がります。昨今離婚が増えて、よく「3組に1組は離婚する」とも言われていますが、離婚した男性は、再婚率も高く、その相手は初婚の女性を選びます。要するに、一部の恋愛強者の男性が次々と初婚女性と結婚と離婚を繰り返すという「時間差一夫多妻制」によって、未婚のままの男性はそのまま生涯未婚で過ごすことになるというわけです。

常に3割はいる恋愛強者の影で、一度も恋愛経験のない恋愛最弱者男性も3割存在する背景には、そういうカラクリがあるのです。

「恋愛強者はいつの時代も3割しかいない」という話をすると、真っ向から反論をする人がいます。「恋愛できる人間が3割しかいないなら、1980年代までの皆婚時代は実現しなかったはずだ。やっぱり今の若者がだらしないのだ」と。

既婚者が全員恋愛強者だと思っているんでしょうか?

前回書いた「岡村隆史さんの「年の差婚」を羨ましがる中年男性に降りかかる現実」で、婚姻数が減っているのは「夫年上婚」の減少だという話をしました。「夫年上婚」の大部分を支えていたのは、まさに伝統的な「お見合い婚」です。

これも出生動向基本調査にありますが、日本において、「恋愛婚」が「お見合い婚」を抜いたのは1965年ごろです。そこから「お見合い婚」比率はどんどん下降し、2015年にはわずか5%程度になりました。

ノートパソコンで作業する女性
写真=iStock.com/Rawpixel
※写真はイメージです

「皆婚」を支えていたのはお見合いだった

さて、ここで思い出してほしいのは、かつて生涯未婚率と呼ばれた50歳時未婚率は、1920年の国勢調査以来、ずっと男女とも5%以下でした。それが5%を男性がはじめて突破したのが1990年です。ここが、明治民法によってスタートした「100年の皆婚時代」の終焉と言われています。

1990年に50歳だった男性とは、1940年生まれで、お見合い婚が過半数を割った1965年に当時の結婚適齢期といわれる25歳だった人たちです。つまり、100年続いた皆婚とは、決して若者の恋愛力によるものではなく、お見合いという社会的お膳立てによって支えられていたものであるといえます。

さらに言えば、2010年男性の50歳時未婚率は20%を超えましたが、彼らは1960年生まれで、20代を1980年代というバブル時代および恋愛至上主義時代ですごした人たちです。あの時代、多くが恋人を有し、恋愛を謳歌していたかのように錯覚している人がいますが、図表1で示した通り、現代と変わらず、3割しか恋愛なんてしていません。