これを「それぐらいガマンしろ」と考えるか、「障壁を取り除く」と考えるか。開発者の感度もあるだろう。実際に「ラベルレスのペットボトル」を出し、消費者に支持されているメーカーもある。
コロナ禍で以前のような外出・遠出もままならないご時世。「自宅にいる時間が長いので、以前に比べて家の中の細かい部分が気になる」という声も聞く。
濃縮系の急拡大は「イエナカ消費の障壁を取り除いた」例ともいえよう。
認知度をどう上げていくかが課題
成長が続く「濃縮系飲料」にも課題は残る。店頭露出が少ないので消費者に気づいてもらいにくいのだ。
拡大したとはいえ、濃縮系市場の「431億円」は、飲料市場全体「5兆2066億円」の1%にも満たない。その割合ゆえ、店頭での販売展開はまだまだ限られる(2019年「富士経済」調べ)。
ただし、興味深いのはサントリーが手応えを感じていることだ。
筆者は同社を以前から取材してきた。手前みそだが10年前のビジネス誌で「ウイスキーのハイボール復活劇」を取材し、記事にこう書いた(一部要約)。
「サントリーは、『行ける』と思うと一気に展開するのが得意だ。サントリーラグビー部(サンゴリアス)の連続攻撃のように、二の矢、三の矢での展開で、胃袋縮小時代に挑む」
この認識は今も変わっていない。当初、濃縮系飲料は「やさしい麦茶」だけで進める予定だったが、好評を受けて「伊右衛門」や「サントリー烏龍茶」など二の矢、三の矢を放った。世代や担当者も変わったが、企業のDNA(遺伝子)として根付く。
これから寒さが増す時期を迎える。「冬の麦茶」「濃縮系飲料」がどう動くか。ラグビー観戦するような気持ちで展開を見続けたい。