岸田派幹部は「けんかを売られた」と公明党側に不快感

公明党の怒りの矛先は、岸田文雄前政調会長に向けられている。広島は岸田氏の地元。県連会長の宮沢洋一参院議員も岸田派の長老だ。それにもかかわらず、今回の問題で岸田氏は積極的に調整に加わらなかった。それに対する不満は大きい。

公明党側は広島3区で譲らなければ次期衆院選では岸田派を応援しないと非公式に伝えているという。岸田派所属議員たちの間にも動揺が広がる。

岸田派幹部は「けんかを売られた」と公明党側に不快感を隠さない。しかし、それと同時に自分たちが担ぐ岸田氏に対しても不安がくすぶる。

岸田派は、池田勇人元首相がつくった党内きっての名門派閥だが、「政策には明るいが政局に弱い」という意味で「お公家さん集団」と揶揄やゆされてきた。岸田氏は「お公家さん」の象徴のような存在だ。閣僚や党の要職を長く務め、無難にこなすのだが、存在感がない。迫力もない。人気も出ない。

10月の党総裁選では菅氏に水をあけられた。その後、無役となり「次」への準備を再開させたが、菅氏を全面的に支えるのか、独自色を見せようとするのかがわかりにくく、埋没気味だ。

広島を走る路面電車「広電」
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むしろ、放置して、話をこじらせてしまっている

そこで起きた、お膝元・広島での難題。岸田氏は、公募により独自候補を擁立する方針を追認する姿勢だが、積極的に動いているわけではない。むしろ、放置して、話をこじらせてしまっている。「ニュー岸田」を見せられていない。

総じて良好な関係を続けてきた自公両党だが、次期衆院選をめぐっては、各地で火種を抱える。公明党は大阪府内で4つの選挙区で公認候補を擁立する方針。だが11月に行われた大阪都構想をめぐって自民党と公明党は対応が割れた。そのしこりが残るため、従来のような協力ができるかどうか、不安視される。

他にも、公明党が候補者を世代交代させる選挙区では、地元の自民党との関係がぎくしゃくしているところもある。

そして広島の難題。万一、ここで決裂して、他の都道府県にも不協和音が波及すれば、次の衆院選で、思わぬ苦杯をなめることになりかねない。選挙協力にとどまらず、連立政権にもひびが入る事態に発展するかもしれない。

そうなったら岸田氏は「A級戦犯」にされる。とてもではないがポスト菅を目指す状況にはならない。