ダブルス世界トップの秘訣はパートナーシップにあり

【三宅】では逆に「ちょっと違うな」と思ったら、すぐに相手を変えるわけですか?

【杉山】そうですね。大会で好成績を残しても、その翌週に私から「ごめんなさい」をすることもありました。そういう意味では自分がランキングの上位にいたので、「選ばれる」のではなく「選ぶ」立場にあったことはラッキーだったと思います。

ただし、繰り返しますがランキングだけで相手を選ぶことはなくて、ダブルスは人と人とのコンビネーションなので、「合うか合わないか」が大切。私が相手を理解していて、相手も私のことを理解してくれている。そんなパートナーシップを模索しつづけたのがナンバーワンになれた秘訣かなと思います。

【三宅】素人考えで恐縮なんですが、2人でやっているとイラっとすることはないんですか?

【杉山】私の場合、それはあまりなくて、たぶんそこはダブルス向きの性格なのかもしれません。試合にミスはつきもので、お互いベストを尽くした上でのミスはOK。ましてや自分が選んだ人がベストを尽くした上で失敗しても気にしません。私もひどいプレーをすることもあるので、こればかりはお互いさまだと思っています。

試合当日に実践していた35のルーティン

【三宅】あと、やはり杉山さんと言えば、フェデラー選手に抜かれるまでグランドスラムシングルス62回連続出場という世界記録を持たれていました。年に4回ですから約15年半。その間、大きな怪我をせず身体を維持できた秘密はなんでしょうか?

【杉山】ひとつは自分なりのルーティーンワークをつくったことですね。試合がある日は35個くらいあって、試合のない日も20個くらいありました。

【三宅】ルーティンが、ですか?

【杉山】多いですよね(笑)。朝起きたあとに30分かけて行う呼吸法に始まって、ジムに行ってもやるべきことを細かく決めていました。すると段々体が動きやすい状態になっていくので、1日の流れが大体でき上がるんですけれども。

【三宅】そういったルーティンは、どうやって決めていくんですか?

【杉山】「どうやったら自分のパフォーマンスを最大限引き出せるか。心身が整うか」というところからの逆算です。きっかけは25歳のときに経験したスランプで、そのときはテニスをやめたいと思うくらい気持ちも身体も追い込まれたんですが、それを機に自分の心と身体と真剣に向き合うようになったんです。

あとは純粋に自分の体のケアに関して、誰よりも時間とお金を割いてきた自負はあります。スランプを機にマッサージをする人も試合に帯同してもらうようになりましたし、スタッフ任せにするのではなく自分も自分の体と向き合いながらケアをするようになりました。

【三宅】なるほど。体の微細な変化にも気づきやすくなって、なおかつ改善意識が強まったわけですね。

【杉山】そうです。もうひとつ意識しつづけたのは「理にかなった動きの追求」です。私は身長163センチでテニス選手としては決して大柄ではないのですが、180センチ、190センチという選手たちと試合をしないといけません。ものすごいパワーに対して小手先で対処しようとしても限界があるんですね。どこかに負担がかかってけがをします。しかし、時速180キロのサーブがきたとしても、理にかなった動きをしてタイミングをちゃんと取れれば、実は体への負担はないんです。

【三宅】たしかにそうですね。私がやっている合氣道がまさにその世界です。

【杉山】そうですよね。ですから、「いかに身体全体を使ってボールに力を伝えられるか」みたいなところはとても重要で、そこはずっと追求を続けました。