食品メーカーが取った措置のなかには、生産拡大や人員増強、飲食店向けから食料品店向けへの出荷転換、パッケージの大型化などがある。だが、こうした措置の多くは、企業の財務にとってはかなりの負担になる。

エコノミストらは、消費者が浪費している余裕などないことを悟っており、したがってパニック買いに走る可能性は低いと話している。

ルクセンブルク・ロジスティクス・サプライチェーン管理センターのベニー・マンタン所長によれば、消費者は、たとえかなりお得な価格が提示されたとしても、むしろ買いだめを控える可能性が高いという。新型コロナ不況のなかで、手持ちの資金を温存しておきたいと考えているからだ。

買いだめに振り回されるサプライチェーン

ロイターが一群の商品について分析したところ、米国・欧州の消費者が購入している量は、今年初め、最初のロックダウン開始の頃に比べて大幅に少ないことが分かった。他方、消費財メーカーにとって、急速な生産拡大がもたらした財務面での影響は深刻なものになっている。

ビヨンド・ミートでは第3四半期の売上高成長が鈍化し、同社は9日、1930万ドルの純損失を計上した。その一因は、今年前半の食料品需要に対応するためのサプライチェーン刷新により支出が増大する一方で、第3四半期には同社の言う「小売店での買いだめ」が減少したことだ。

香辛料メーカーのマコーミックのコストは最新の2四半期で急増し、リフィニティブによれば、今四半期はさらに上昇すると予想される。

マコーミックのローレンス・カージュスCEOは10月、ロイターの取材に対し「当社の今日のサプライチェーンは、今年初めに比べてはるかに強靱きょうじんなものになっている」と話している。

カージュスCEOによれば、マコーミックでは、一部のグルテンフリー香辛料といった商品を後回しにして、パンプキンパイ用香辛料やタコシーズニングなど人気が高く簡便な調味料の素材を優先せざるをえなかったという。「希望的観測は避けたいところだが、マコーミックも食品産業全体としても、以前よりはるかに改善されたと思っている」と述べた。

リフィニティブによれば、パスタソースのブランド「プレゴ」を傘下に収めるキャンベル・スープは、来月の業績発表において、過去5四半期で初めて営業費用の上昇を報告すると予想される。キャンベルは、チキンスープ、トマトスープなど人気の高い製品に注力するため、一部の製品を犠牲にしており、最新四半期には衛生設備への投資や人件費が上昇した。また、9月には「ゴールドフィッシュ」クラッカー製造工場を新設するために4000万ドルを投資している。

キャンベルのマーク・クラウスCEOはロイターに対し、同社は予想外の需要があった場合に迅速に対応するため、スープ及び一部のスナック食品の製造について、「コ・パッカー」と呼ばれる外部製造企業へのアウトソーシングを拡大したと話している。

トロントのスーパーで2020年3月撮影
写真=ロイター/Carlos Osorio
トロントのスーパーで2020年3月撮影