リーダーは側近にどんな人材を置くべきなのか。精神科医の和田秀樹氏は「大統領選で負けたトランプには、周囲にイエスマンを集める裸の王様のような傾向があった。自分に都合の悪いことをあえて言ってくれる人物や、大衆心理に熟知したアドバイザーがいなかったことが敗因ではないか」と指摘する――。
裸の王
写真=iStock.com/Ann_Mei
※写真はイメージです

菅義偉総理大臣が、日本学術会議が推薦した6人の候補者の任命拒否をめぐって、国会で激しい批判を受けている。

菅氏の首相としての滑り出しは順調なものだった。一般国民の可処分所得増につながる携帯電話料金の値下げを打ちだしたり、ハンコの廃止を迅速に進めたりするなど、スピード感や実行力もあいまって、国民的人気は高く、非常に高い内閣支持率を得た。

この学術会議問題が、今後の菅首相の人気や政権運営にどう影響を与えるのかはわからない。安倍路線の継承というのだから、多少学問の自由を損なったとしても、保守層の支持につながり、全体のダメージも最小限に抑えられると見たのかもしれない。

ただ、国会中継を見ている限り、野党からの質問に同じ内容を棒読みのような形で答えるなど、何とも頼りない印象だ。そう感じた国民も少なくないのではないか。

ともあれ菅首相人気の趨勢は学術会議問題だけでは占えないが、政治は、一寸先は闇だ。油断することは許されない。勢いのある政党が一気に失速することもある。

例えば、2017年に結成され、2018年に解散した「希望の党」だ。政権政党になるのではと思われるほど人気を集めていたにもかかわらず、党創設者の小池百合子氏が発した「排除します」のひとことで、その気運が一気にしぼんだように、ちょっとしたミスが世論や政治的人気に大きな影響を与えることがある。

落選トランプは「政治的な死」を迎えたのか

もっとも、それが必ずしも「政治的な死」を意味するわけではない。その後の小池都知事の人気の急回復と選挙での圧勝からもそれはわかるが、アメリカの大統領選挙は、そうはいかない。どんな僅差であれ勝った側が大統領になり、負けた側は少なくとも政治的にはただの人となる。

今回の選挙では、中西部では善戦したものの、選挙人の数でも予想外の大差で現職のトランプは負けた(まだ、裁判に持ち込むという話があるが、このくらいの差だと1州や2州、裁判がもつれてもバイデンの当選は確実だろう)。

この選挙では、前回選挙でトランプの逆転の原動力となったラストベルトと言われる工業労働者の多い州を、トランプはことごとく落としている。

いくつかの要因はあるだろう。