自宅にいると憎しみが募るのか「殺人事件」の被疑者の半数は親族

最後に、犯罪の種類によってコロナの影響が異なっている点を理解するため、犯罪によって犯人と被害者との関係がどう違っているかを示すデータを紹介しよう。

図表3のグラフは、犯罪不成立、訴訟・処罰に至らないような事件を除いた検挙件数について、被害者と被疑者との関係別に構成比をみたものである。

親族・顔見知りの犯人が多い「殺人」、少ない「窃盗」

「殺人」と「傷害」は、親族およびその他の面識のある者に対する犯罪である比率が高い。特に「殺人」は5割以上が親族に対して犯されている。

一方、「窃盗」などの財産犯、および性犯罪は、面識のない者に対して犯される場合が多い。ただし、財産犯のうち「恐喝」、性犯罪のうち「強制性交等」については、面識のある者に対して行われる比率が高い。

「殺人」が親族間で多くなるのは歴史的趨勢であり、これを「ヴェルッコの法則」という。家族の間には深く根差した利害の葛藤があり、家族同士がお互いに腹を立てる割合は時期や場所にかかわらず一定している。これに対して、男性の知人同士のマッチョな暴力を激化させるのは支配権争いの要素が強いため社会環境による影響を受けやすく、また、治安の改善でそうした要因で起こる殺人は減少する。このため、この法則が成り立つものと考えられている。

親族、顔見知りの犯行が多い「殺人」は、コロナの流行で外出を控え、自宅にいることが多くなればなるほど、発生する可能性は高くなると思われる。コロナで「殺人」が減られないのはそうした要因が働いていると考えられる。

一方、もっぱら面識がない被害者に対して犯されることが多い「窃盗」は、留守家庭が減り空き巣に入りにくくなったという影響だけでなく、見知らぬ者同士の触れ合い自体がコロナで大きく縮小したので、それにともなって犯罪件数も全体として大きく減少していると見られる。

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