要するに今の日本人はどの層を切り取っても、坂の上の雲を目指した明治期や1960~70年代の高度成長期のような目線の高さ、アンビションや野心がないのである。それは企業のIPO(新規株式公開)の数にも反映されていて、09年の新規上場企業数はわずか19社。ピークが00年の180社だから10分の1に落ち込んでいる。09年に上場廃止になった企業が60社あるから、差し引きで上場企業の数は減っているのだ。

1981年、わずか24歳で志を立てて起業したソフトバンクの孫正義社長。(Bloomberg/Getty Images、PANA=写真)
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1981年、わずか24歳で志を立てて起業したソフトバンクの孫正義社長。(Bloomberg/Getty Images、PANA=写真)

これに対して、09年の上場数約200社、上場予備軍が6万社といわれる中国はもとより、韓国、台湾、香港にも日本はIPOで追い抜かれている。私は「アタッカーズ・ビジネススクール」という起業家養成学校を15年続けているからよくわかるのだが、新しく会社を興して上場しようという意欲はすっかり減退して、最近は熾烈な競争とは無縁なNPOやNGOを立ち上げたいという人が大幅に増えている。全員が全員、クリーンでグリーンな“目付き”でやってくる。人を押しのけてまで成功してやろうというギラギラしたタイプは皆無だ。この10年間で人種、染色体までが変わってしまった観がある。

若者をけしかけて起業、上場させることにかけては人後に落ちない起業塾の元祖の私が嘆息するほど、日本人の起業精神は萎えてしまった。今から10年ほど前、孫(正義)さんがナスダック・ジャパンを立ち上げたとき、渋谷でビットバレーの若手起業家を集めて大パーティーをやったが、有象無象3000人が集まった。今やったら30人と集まらないだろう。

当時の若手起業家も今や30代半ばを過ぎているが、どこへ行ったやらである。その世代より20歳若い高校生の意識が前述の通りだから、彼らが大きな夢を持って日本経済を牽引するような大きな会社をつくり上げたり、アンビションを持って海外に雄飛することを期待できる雰囲気ではない。

日本の凋落とは対照的に、この10年で状況が激変したのが韓国だ。

98年の通貨危機でIMF(国際通貨基金)の管理下に入る屈辱を味わった韓国は、当時の金大中大統領が大胆な規制緩和で景気を刺激する一方、世界の舞台で活躍できる人材育成に国を挙げて取り組んだ。特に力を注いだのがIT化と英語教育。今や韓国のインターネット普及率は世界一で、中高年世代もネットを使いこなしている。英語に関しても、私は高麗大学と梨花女子大学で教鞭を取っているが、学生の入学時のTOEICのスコアは800点。サムスンに入社するレベルは900点だし、同社で課長になるには920点が必要だ。