次に「ひさし」。太陽が真南に来ると夏は約70度、冬は約30度の角度で陽射しが入り込む。最近はデザイン重視のせいか、ひさしがなく、夏も昼間の陽射しが入り冷房効率の悪い家も多いが、90センチほどの長さのひさしをつけることで、冬は陽射しを入れ、夏は上手にカットすることができる。

既存の家に、「サッシ替え」「太陽光発電」はペイしない

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ひさしが難しければ、「よしず」や「オーニング(店の軒先にあるような日よけ)」を利用し、外壁にフックをつけて、ベランダの手すりとの間にキャンバス地の布を張るだけでもいい。室温が3度くらい違うこともある。

太陽光のコントロールには、植木も効果がある。見栄えだけを理由にコニファーなどの常緑樹を植えていないだろうか。確かに見栄えはいい。しかし、夏はともかく、冬場に陽射しを取り込めない。夏は日陰をつくり、冬は陽射しを入れたいなら、落葉樹である。季節に合わせて勝手に葉を増減して陽射しをコントロールしてくれるのだから、これほど便利なものはない。

実はここに挙げた知恵はどれも昔から日本家屋で普通に取り入れてきたことである。自然との上手な付き合い方の宝庫なのだ。温故知新で上手に省エネに活用したい。

(構成=斉藤栄一郎)