日本政府はもっと強くドイツに訴える必要があった

次に10月11日付の産経新聞の社説(主張)を読んでみよう。

「ドイツの首都ベルリン中心部の公共用地に、韓国系市民団体が中心となって慰安婦像を設置した問題で、像が置かれた地区当局が設置許可を取り消し、14日までに撤去するよう求めた」
「茂木敏充外相が1日の日独外相テレビ会談で撤去要請するなど、外務省によるドイツ側への働きかけが功を奏した」

市民代替の裁判所への訴えによって慰安婦像の設置が再び認められるようになる前の社説である。日本政府は市民団体の動きを察知できなかったのか。産経社説に「功を奏した」と褒められていい気になっていたのかもしれない。もっと強くドイツに訴える必要があった。これからも設置の中止をドイツ政府に強く求めるとともに、国際社会に日韓問題を正しく理解してもらう努力を続けるべきである。

産経社説も褒めるだけでなく、社説として自国の政府を叱咤激励する立場にあることを忘れてはならない。

この社説の書き出しも「菅義偉政権が安倍晋三前政権と同様に、韓国の反日行為や国際法違反を正していく姿勢をとっている点を評価したい」だったが、現政権をむやみに褒めたたえるようで新聞社説として情けない。権力に対し、批判精神を失った社説はもはや社説とはいえない。

慰安婦問題の解決は未来永劫に変わらないことが決まっていた

産経社説は指摘する。

「像を放置すれば、慰安婦とは強制連行された『性奴隷』であるといった歴史の捏造が広まりかねない。悪質な反日行為の芽は確実に摘んでいかねばならない」
「容認できないのは、韓国外務省報道官が、今回の像を『歴史的事実に関連した追悼教育のため』だと擁護し、撤去を求めた日本政府を『日本が自ら表明した責任の痛感や謝罪、反省の精神にも逆行する』と批判したことだ」

「歴史の捏造」「反日行為の芽」「追悼教育」「責任の痛感や謝罪、反省の精神にも逆行」。どれも産経社説の指摘の通りだ。文在寅政権下の韓国は、アメリカを介在した日本の“同盟国”とは思えない。

さらに産経社説は指摘する。

「2015年の日韓合意は、慰安婦問題の『最終的かつ不可逆的な解決』を確認した。国と国の約束は守らなくてはならないのに、文在寅政権は日韓合意には法的拘束力がないと主張している」

「不可逆的」とは決してもとに戻ることのないことを強調して指す言葉である。つまり慰安婦問題の解決は未来永劫に変わらない、と日韓両国の間で決まったのである。それを白紙に戻す文在寅大統領の言動は、国際間の約束違反にととどまらない。もはや文氏には人間としての価値も尊厳もない。