※本稿は、高橋幸宏『7000人の子の命を救った心臓外科医が教える仕事の流儀』(致知出版社)の一部を再編集したものです。

20年間日本一の小児心臓手術

私が副院長を務める榊原記念病院は、心臓外科の世界的権威・榊原仟さかきばらしげる先生が設立した循環器専門病院です。年間500件を超える小児心臓手術を行っており、20年近く日本一の数を継続しています。

私が行ってきた小児心臓外科手術の成功率は、98.7%という数字になっています。榊原記念病院には比較的難しい症例の患者さんしか来ませんし、一般的にいえば、難しい症例の割合が増えれば増えるほど確率は下がりますから、その中である程度の成績を挙げているといえるでしょう。

手術の難易度に応じて点数を割り当てる「アリストートル・スコア」というものがあります。榊原記念病院のスコアは平均7~8点で、非常に難しい手術を多くやっていることになります。海外の医療関係者と話しても、「とてもいい成績だね」との評価を受けています。

大人と子供の手のひらが、心拍動曲線が描かれたハートを包んでいる
写真=iStock.com/ThitareeSarmkasat
※写真はイメージです

子どもの心臓にメスを入れるということ

みなさんは、子どもの心臓手術に対してどのような印象をお持ちでしょうか?

休むことなく拍動を続ける命の源ともいえる心臓にメスを入れる。しかも、小さな小さな子どもの心臓です。「考えるだけで怖くなる」「絶対したくない仕事」などと思われるかもしれません。

それはまさしくその通りです。だって、現在も心臓手術をやり続けている筆者もたまにそう感じるのですから……。

しかし、胎児の命と向き合えば向き合うほど、また、親御さんと付き合えば付き合うほど、そして手術チームのみなと共に苦労すればするほど、そういった感情や日頃の悩み事を超えて、とんでもなく大事な“何か”を考えなければならない状況が出てきます。