韓国の20代は貧しい。失業率は9%台、「拡張貧困率」は23%とされる。背景にあるのは、大企業と中小企業の大きな格差だ。雇用の伸びない国内を見限り、海外就労に力を入れる政府。若者たちはその現実を「ヘル朝鮮」と自嘲する。子どもに人気の職業体験型テーマパーク「キッザニア」にも、その実態は表れる。日韓キッザニア比較が浮き彫りにするものとは——。

*本稿は、春木育美『韓国社会の現在 超少子化、貧困・孤立化、デジタル化』(中公新書)の一部を再編集したものです。

キッザニア東京での宅配ドライバーの職業体験。
写真=キッザニア東京のウェブサイトより
キッザニア東京での宅配ドライバーの職業体験。

大統領就任初日に「働き口委員会」設置

韓国でもっとも貧困状態にあるのは、20代の若者と高齢者である。20〜29歳の失業率は、ここ数年9%台が続く。これは1997年のアジア通貨危機後の7%台を上回る高水準である。

韓国の大学進学率は世界最高ランクで、若い世代は高学歴者ばかりという国になったが、彼らが求める雇用創出が高学歴化のスピードに追いつくことはなかった。就職を諦めた人やアルバイトをしながら就職活動する人を含む20代の「拡張失業率」は、約23%に達するといわれる。4〜5人にひとりが事実上の失業状態にあることになる。

2017年5月に発足した文在寅政権は、雇用を中心に経済を推進する「イルチャリ(雇用)政権」を目指すと宣言した。就任初日に真っ先にしたことは「働き口委員会」の設置であった。

2018年には「青年追加雇用奨励金」制度を導入した。これは、15〜34歳を正規職として新規採用した中小企業に対し、最大3年間、1人当たり年900万ウォンを支給する制度である。成長の可能性が高い15業種の中小企業については、若者3人を正社員として新規採用すれば、ひとり分の賃金として最大で年2000万ウォンを支給する。