自閉症の子は、少しずつ変わっていく

その後も親子三人は4週ごとにクリニックに通ってくれました。便秘に関しては同じパターンが続いていました。便を出さないことにもこだわりなら、夕方5時に座薬を入れて便を出すこともこだわりのようです。

私はミキちゃんが退院してから現在まで食のこだわりがどうなっているのかを聞いていなかったことに気づいて、次回の受診時に聞いてみようと思っていました。そしてまた受診日がやってきました。

「お母さん、退院後、ミキちゃんの食事はどうなったのですか?」
「スポイトでテルミールを飲ませるのは……1年4カ月くらい続きました。それがあるとき、いきなりレーズンパンを食べたんです。そして少しずつ、スプーンや、フォークやコップに手を伸ばすようになりました」
「では、スポイトは終わったんですね? 自閉症の子って少しずつ変わっていくんですよね。こだわりも変化していきますよね」

3歳、4歳の頃は診察室で暴れることもあった

「自閉症の診断が付いて療育も始めました。療育手帳も申請できると知って保健センターに行きました。そうすると、児童相談所が千葉市にあるのでそこへ行ってくださいと言われて、知能検査を受けました。知能指数は35から50という判定でした」
「中等度ですね。では療育手帳も交付されましたね」
「そうなんです。3歳、4歳の頃はいろいろな面で大変でした。食べるようにはなったんですけれど、決まった食器を使うとか、食べる順番を決めているとか、こだわりが強かったんです。診察室で暴れることもありましたし、療育の母子分離のときに2時間半暴れたこともありました」

私はその言葉に少し驚きました。おとなしくお父さんに抱っこされているミキちゃんとあまりにもイメージが違うからです。

「そして5歳になって、この子は言葉が出るようになりました」
「そうなんですね。ぼくの外来に来たときは、落ち着いてきた頃だったんですね」
「ええ、その代わり便秘になってしまって」とお母さんは笑いました。