第1波の知見を活用できたからこそ、第2波を乗り切れた
次に9月23日付の朝日新聞の社説を読んでみる。冒頭から「菅政権は、新型コロナウイルス対策と社会経済活動の両立を掲げる。実際にどう臨むのか。これまでの経験から教訓を引き出しつつ、課題を社会全体で共有すべきだ」と訴える。
感染症対策は過去の経験に学ぶことが大切だ。とくに人類にとって初めて遭遇する新型コロナのような新興感染症は、その流行の初期段階で得た経験や知見をうまく活用する必要がある。
朝日社説は書く。
「『第2波』では、緊急事態宣言は出さず、都道府県や地域単位での部分的な休業や移動自粛の要請で対応した。より早く手を打って感染を抑え込めなかったか、といった反省点がある一方、結果的には拡大に歯止めをかけつつ、4~5月ほどには社会経済活動を制約せずにすんだ。医療・防疫関係者や様々な業界の努力や工夫の成果であり、経験の蓄積が生かされてきたといえるだろう」
沙鴎一歩は今回の朝日社説の見解には賛成する。第1波で得られた知見をうまく活用できたからこそ、第2波をうまく乗り切ることができたのである。
菅政権の掲げる感染対策と経済活動の「両立」しかない
朝日社説は指摘する。
「とはいえ、経済への負の影響は依然、深刻だ。6月は前年並み近くに戻った家計消費が、7月は再び落ち込んだ。鉱工業生産は回復基調だが、水準はかなり低い。雇用の減少幅も非正規を中心に高止まりしている」
「4~6月のGDPは前期比7.9%のマイナスだった。7~9月は上向くものの、低下幅の約半分を回復する程度にとどまる、との見方が多い。感染の波が繰り返される限り、経済も一進一退を強いられそうだ」
朝日社説が指摘するように、経済状況はかつてないほど深刻である。この大問題をどう解決してくのか。菅政権が掲げる感染対策と社会・経済の活動の両立しかない。
朝日社説は主張する。
「『第2波』の経験を踏まえて再確認すべきは、医療・防疫の強化と経済活動の回復は車の両輪であることだ。感染が広がれば経済にもブレーキがかかる。両者のバランスをとりながら、水準を高めていくしかない。均衡を失した場合には、柔軟に軌道修正することも必要だ」
「金融・財政政策の大枠は維持すべきだろう。そのうえで、事態が長引き、回復度合いにもバラツキが見えるなかで、よりメリハリの利いた対応を工夫する必要がある。特に、経済縮小のしわ寄せを受けた働き手の生活への目配りは欠かせない」
「防疫と経済活動のバランス」と「メリハリの利いた対応」。その通りなのだが、抽象的だ。朝日社説は個別具体的にそれぞれごとに対応していくことの難しさを自覚していない。残念である。