予想外の経費、刻一刻と下がるマスク相場

「1枚約30円というのはマスクだけの価格で、パッケージ料金が別にかかることもわかりました。日本で販売するには、パッケージの表記も日本語にしたほうがいい。とりあえず50枚入り1000箱分のパッケージ作成費用として、6万円ちょっとかかりました。

そうしてパッケージはできたのですが、今度は1000箱分は一気に用意できないということになって、4月半ばに400箱、4月の末までに600箱と2回に分けて送ってもらうことに。そのせいで割高になってしまい、2回分の送料として17万円も追加でかかることになった。この時点でマスク1枚当たりのコストは39円くらいになっていました」

それでもまだ最安値の80円で売ったとしても、マスク1枚当たりの原価率は50%未満。そう考えれば、高山さんの商魂が損なわれることはなかった。

「400箱は4月12日に発送されたのですが、日本に届いたのは4月27日のことでした。マスクの相場は発注から1カ月ほどの間に下落し、マスク1枚当たりの最安値は60円ほどになっていました。それはしょうがないとしても、腹が立ったのが、日本で約4.7%の関税がかかったこと。マスク不足の真っただ中に、日本政府は医療用以外のマスクに関税をかけていたんですよ。信じられますか?」

この時点で、マスク1枚当たりの利ザヤは20円程度になってしまっていたことになる。

「そうこうしている間にも刻一刻とマスク相場は下がっていく。できるだけ早く売り切らなければという思いで、某ECサイトに当時の最安値とほぼ同額の1箱2980円(50枚入り、税・送料別)で出品しました」

結果、売れ行きは順調で、2週間ほどで400箱を売り切ったという。

規制強化を受けて3万5000円の追加費用を支払うことに

「ただ、ECサイトの販売手数料で8%ほど取られるので、400箱分を売り切った段階での儲けは30万円ちょっとになってしまいました」

当初の皮算用からは、かなり目減りしてしまったことになるが、このとき高山さんは別の問題を抱えていた。

「4月末から当局による規制が変更となり、中国の未発送の600箱について輸出が保留になっているっていうのです。問題とされているのは、パッケージの『抗菌』と『飛沫防止』の文字。医療用として認可を受けているものでなければ、その言葉は使えなくなったということで、パッケージを変更しなければならなくなりました」

確かに4月25日に中国税関総署が公布した「防疫物資輸出の品質監督を更に強化することに関する公告」には、輸出用マスクの医療用と非医療用の区分厳格化が盛り込まれており、医療用として認可を受けていないマスクについては、「医療」や「ウイルス除去」などといった「消費者に誤解を与える」文言を添えることが禁止されたようだ。

こうした突然の規制強化をクリアするためには、約3万5000円の追加費用を払ってパッケージを新調するしかなかったという。

そしてようやく残りの600箱が高山さんの手元に届いたのは5月11日のことだった。しかし……。