腹回りが大きくなるほど「がん」も増える
日本人の死因の第1位を占める「がん」や、高齢化とともに増え続けている「認知症」といった病気も、内臓脂肪の蓄積によってリスクが高まります。
内臓脂肪は、さまざまな炎症物質を放出し、体内で慢性的な炎症を引き起こします。体にとって、慢性炎症はエラーのもと。
慢性炎症があると、細胞分裂の回数が増えてDNAのコピーミスを起こしやすくなったり、活性酸素が過剰に生まれて細胞内のDNAが傷つけられたり、正常な細胞に「遺伝子編集酵素」というものが生まれて遺伝子変異が重なったりと、がん細胞が生まれやすく、かつ、がんが進行しやすい環境になってしまいます。
実際、世界保健機関(WHO)の外部組織である国際がん研究機関(IARC)は、4万人以上を対象とした研究結果をもとに「内臓脂肪ががんの発症リスクを高める」ことを報告しています。内臓脂肪はお腹まわりにつく脂肪なのでその過多は腹囲に表れますが、IARCによると、腹囲が11センチ増えるごとに肥満に関連するがんのリスクが13%上昇したそうです。
内臓脂肪型肥満は「アルツハイマー型認知症」のリスク3倍
同じように、認知症も内臓脂肪が多いとなりやすいことが、わかってきています。
認知症にはいくつかのタイプがあり、「脳血管性認知症」の場合は、脳梗塞や脳出血などの脳の血管障害が引き金となって発症するので、内臓脂肪が増えて動脈硬化のリスクが上がれば、当然、脳血管性認知症のリスクも上がります。
認知症のなかでも最も多い「アルツハイマー型認知症」のほうも、無関係そうに見えるかもしれませんが、じつは内臓脂肪と大いに関係しています。
たとえば、アメリカの研究では、中年期に腹部肥満(内臓脂肪型肥満)だった人は、高齢期以降にアルツハイマー型認知症を発症するリスクが3倍高くなると指摘されています。
同じように、約1万人を対象としたイギリスの研究では、BMI〔体格指数=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)〕が高いほど、ウエスト/ヒップ比が大きいほど、体脂肪量が多いほど、脳の灰白質の容積が小さくなっていたそうです。
灰白質とは、神経細胞の細胞体が集まっている領域のこと。アルツハイマー型認知症をはじめ、脳の神経細胞が死滅していく認知症の患者さんの脳内では灰白質の萎縮が見られます。