生活習慣病のエキスパートである池谷敏郎医師の著書が売れている。『50歳を過ぎても体脂肪率10%の名医が教える 内臓脂肪を落とす最強メソッド』(東洋経済新報社)は13万部を突破。さらに無駄な脂肪を燃やす方法について『代謝がすべて』(角川新書)を上梓した。今回はこの最新作から、「腹回りの内臓脂肪より恐ろしい『敵』」について紹介しよう──。(第1回/全3回)

※本稿は、池谷敏郎『代謝がすべて』(角川新書)の一部を再編集したものです。

行き場を失った脂肪は臓器にまとわりつく

脂肪が増えて内臓脂肪を処理しきれなくなってくると、「怖いこと」が起こります。

通常、脂肪はお腹まわりにつく「内臓脂肪」か、皮膚のすぐ下につく「皮下脂肪」としてたくわえられますが、内臓まわりにしても皮膚の下にしてもスペースには限りがあります。これらに入りきらなくなって行き場所を失った脂肪が、本来はつくはずのない心臓や肝臓などの臓器やそのまわり、筋肉などにつくようになるのです。そして、各臓器でさまざまなトラブルを引き起こします。

たとえば、肝臓に余計な脂肪がついた状態が「脂肪肝」です。脂肪肝といえば「お酒の飲み過ぎでなる」イメージがいまだに根強いですが、最近では、アルコールが原因ではない脂肪肝が増え、問題になっています。

動脈硬化、心筋梗塞、心不全が次々と……

非アルコール性の脂肪肝が悪化して肝臓に慢性の炎症を引き起こすことを「NASH(非アルコール性脂肪肝炎)」といいます。NASHの人は、動脈硬化や心筋梗塞などの発症率が2倍以上高くなるという統計があるほか、肝硬変、肝臓がんへと進行するリスクが、アルコール性の脂肪肝以上に高いとも指摘されています。

太った男性が苦しそうに心臓に手をあてる
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※写真はイメージです

心臓のまわりについた脂肪も、怖い存在です。心臓に血液を送る冠動脈などに細い血管を伸ばし、細胞にダメージを与える毒素を送り込んで、密かに動脈硬化を進めてしまうのです。そして、やがては心筋梗塞や心不全といった重大な病気を引き起こします。

ひっそりと心臓に寄生するかのように付着し、命を奪っていくことから「エイリアン脂肪」との異名をもちます。

健康診断などで脂肪肝と診断された人は、すでに心臓にもエイリアン脂肪がついている可能性が大です。脂肪をためこまない生活に切り替えなければいけません。