「もう後がないという覚悟で臨まねばなるまい」と朝日社説

「『1強多弱』といわれた野党の分裂状態に終止符を打ち、政権選択の選挙に挑む足場を築いたことは間違いない。自公政権との対立軸を明確に示し、国民から選ばれる政党になれるか、もう後がないという覚悟で臨まねばなるまい」

こう合流新党にエールを送るのは、9月11日付の朝日新聞の社説だ。続けて朝日社説は書く。

「期せずして、7年8カ月に及んだ安倍政権の終わりと重なった。『弱い野党』の存在が、国会の行政監視機能の低下を招き、長期政権のおごりや緩みを許した側面は否定できない。次の首相が誰になるにせよ、政治に緊張感を取り戻すうえで、野党第1党の役割は大きい」

安倍政権をとことん批判してきた朝日社説だけに、「野党第1党の役割は大きい」と前向きに捉える気持ちは分かる。問題は合流新党の立憲民主党が朝日社説に応えるだけの能力があるかどうかである。

枝野氏は私たち国民の気持ちを理解できていない

朝日社説はさらに書く。

「新党といっても、党名も代表もかわらない。旧民進党勢力が近づく解散総選挙を意識して、『元のさや』に収まっただけとの冷めた見方もある」
「これに対し、枝野氏は選挙期間中、党の綱領を見比べて欲しいと反論した。合流新党の綱領には『過度な自己責任論に陥らず、公正な配分により格差を解消』するとある。民主・民進両党の時代にあった新自由主義的な傾向からは明確に決別したというわけだ」

新党の中身が「変わらない」という批判に応えるには、党綱領の刷新よりも衆院解散総選挙で勝利を収めることだ。「新自由主義からの決別」と言っても選挙民には理解し難い。枝野氏は私たち国民の気持ちを理解できていないようだ。

朝日社説は「国民の高い支持で政権交代を実現しながら、3年3カ月で幕を閉じた民主党政権の混迷は、まだ記憶に新しい。枝野氏は官房長官や経産相などとして、その政権の中枢にいた」と指摘し、「挫折の教訓を生かし、国民から政権を託すに足ると認めてもらえるか、その責任は極めて重い」と訴える。

一見、枝野氏を批判しているようで実は違う。彼の責任の重さを浮き彫りにして声援を送っているのである。朝日社説らしい書きぶりだが、社説はもう少しストレートに書いたほうがいい。