こうして75歳まで持ちこたえれば、それ以降の「ステージIII」は積極的な運用はせず、資産を取り崩して生活する。したがってステージIIでの運用は非常に重要になる。失敗すると資産寿命が短くなり、人生の最後まで資産がもたなくなる懸念があるからだ。

では、資産寿命を延ばすためにはどのような運用をすればよいのか。ポイントは、資産を4つに分けることだという。「流動性資金」「目的別資金」「安全性資金」「収益性資金」だ。流動性資金はイザというときのために生活費の3~6カ月分を確保しておく。

目的別資金は、旅行費用や子どもの結婚費用、家のリフォーム代など、向こう3~5年で使う予定があるお金のこと。残った資産を、安全性資金と収益性資金に分ける。安全性資金は、今後10年以内の老後資金や、最低限なくなっては困るお金。収益性資金は10年以上先の老後資金や子どもに相続するお金で、これが運用の原資となる。「計算してみると300万~400万円程度で、投資に回せるお金は意外と少ないのが実態です」と黒田さん。

手を出すと危険、外貨建ての金融商品

この貴重な資金をどのように運用すればよいのか──。黒田さんは次のようにアドバイスする。

「退職金という大きな獲物を狙い、金融機関などがあの手この手で攻めてきます。大事なことは、自分が理解できない金融商品には手を出さないことです。典型的なのが外貨建ての金融商品です。確かに円建てに比べて高い利率が大きなメリットですが、手数料が高いうえ、為替変動などのリスクも大きく危険です」

黒田さんがすすめるのは「つみたてNISA」(少額投資非課税制度)などの投資信託だ。つみたてNISAは年間40万円を上限に投資でき、最長20年間の運用益(配当金や売却益)が非課税になるのが最大の特徴。対象商品は金融庁が認定したものに限定されるので、初心者でも安心だ。ただし、元本割れのリスクがあることを覚えておこう。

また50代であれば、同じく積立投資で税制優遇のある「iDeCo(イデコ)」(個人型確定拠出年金)も検討の余地があるという。「イデコは60歳未満しか加入できませんでしたが、2020年5月の法改正で22年5月から65歳まで加入できるようになり、50代でも始めやすくなりました」(黒田さん)。

新型コロナウイルスによる株価急落で、いま投資熱が高まっている。もっとも、若い世代に比べシニアは失敗のダメージが大きいだけに、資産運用には慎重を期したい。「運用に不安があれば、ムリに投資をしないのも1つの選択肢です。利息がほとんどつかなくても定期預金や個人向け国債などでもいいと思います」と黒田さんは言う。

深田晶恵(ふかた・あきえ)
生活設計塾クルー取締役
1996年にファイナンシャルプランナー資格を取得し、98年4月に独立。『お金はこうして殖やしなさい』など著書多数。
 

黒田尚子(くろだ・なおこ)
黒田尚子FPオフィス代表
ファイナンシャルプランナー。お客さまのライフプラン実現のためのアドバイスを行う。著書に『がんとお金の本』など。
 
(図版作成=大橋昭一)
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