リアルでの付き合い以上に丁寧な働きかけが不可欠

「Stroke」という言葉は、カナダ出身の精神科医エリック・バーンが提唱した「交流分析」という心理学パーソナリティ理論の1つで、「人の存在や価値を認める働きかけ」のことです。

「がんばっているね」「君に頼んでよかった」と心の中で思うだけではなく、相手に伝えるための働きかけがストロークです。テレワークの生活が続くと、外部との交流が少なくなって孤独感や疎外感をつのらせて、それが大きなストレスになってしまうこともあるでしょう。オンライン上では「阿吽あうんの呼吸」も通じにくいようです。リアルでの付き合い以上に丁寧な働きかけが、円滑なコミュニケーションのためには欠かせません。

「Suggest」は提案、つまり未来に向かっての声かけです。「こうしたらいいんじゃないか」「こんなふうに考えたら解決できるのでは?」という前向きなもので、意識したいのは「フィードフォワード」です。フィードバックが、すでに行われたことに対しての反省や叱責になりがちなのに比べて、フィードフォワードは未来に向けて今打つべき手を提案するものです。部下の行動の変化を促し、よりよい結果につなげていくことができます。

「コンタクトレス・ロープレ」をやってみよう

非常に効果的な部下指導のメソッドとして、ぜひお勧めしたいのが「コンタクトレス・ロープレ(ロールプレイング)」です。テレワークが進み、上司と部下、先輩と後輩が顔を合わせる時間はますます減っていくでしょう。身近な人からちょっとした説明のコツを学んだり、クロージングのテクニックを盗んだりするような機会もなくなってしまいます。

その穴を埋めるのが、コンタクトレス・ロープレです。営業部隊のいる会社では、以前は当り前のように行われていたロープレですが、最近は研修に取り入れるところも減ってしまいました。しかしロープレは、営業力アップに非常に効果があります。コンタクトレス(=非接触)での研修として、この機会にぜひ取り入れていただきたいと思います。

マンツーマンでもいいのですが、より効果的なのはグループ・ロープレです。上司や先輩1人と現場の営業担当者3~4人で1グループをつくります。最初は、上司(先輩)が顧客役、部下(後輩)が営業担当者として商談を行います。他の参加者はその様子を見学します。

一通りの商談が終わったら、見学していた人は気づいたことや感想を発表します。「表情が固かったよ」「説明がわかりにくいところがあった」など、思ったことを率直に伝えます。次は、営業担当者をチェンジして、順に同じように繰り返します。