「イノベーションが次々と起こる文化風土をつくれ」
さらに風通しをよくするため、例えばカンパニーの技師長などにイノベーション推進本部のメンバーを兼務させる。あなたは東芝全体を考えるこのプロジェクトのメンバーだ、と自覚を促すわけだ。
さらに、豊住氏、岸本氏らには、こうした過程で生まれたイノベーションの“体系化”という難題が課せられている。「実務部隊はどんどんイノベーションを起こし、我々推進部隊は体系化によってイノベーションが次々に起こるような文化風土をつくれ、と。それに向かって日夜苦しんでる(笑)」(豊住氏)。
実際の進行状況を見てみよう。東芝には八つのインハウスカンパニーと八つの分社会社がある。まず複数のカンパニーにまたがった大きなプロジェクト(リーダーは主に役員クラス)を起こした。さらに、各カンパニー事業部の間のプロジェクトをイノベーション推進本部に登録し、成果を報告するよう指示が出された。大きいものはカンパニー間を「横串で繋ぐ」必要があるので、副社長や担当役員ら開発、生産調達、営業のキーマンを集めた「イノベーション推進委員会」でヒアリングやフォローを行う。現在、大小50件のプロジェクトが登録されている。
ただ、見逃せないのは長期に及ぶMI活動が生んだ分厚い蓄積である。本来、文化も使う言葉も異なる各カンパニー間に、MIベースの「共通言語」が浸透。icubeでのスムーズなコミュニケーションの下地となっている。さらに、「シックスシグマを学んだおかげで全社員の30%、約5万人がプロジェクトリーダーをやれる」(豊住氏)。8年近い試行錯誤は、決して無駄ではなかったといえる。