EC事業でもZホールディングスに大敗

順調なはずの楽天のEC事業の決算に目を凝らすと一概に「とても良い」とは言えないのです。決算の評価としては、ECは順調で、「モバイル」事業が足を引っ張ったかのように見えますが、他のEC企業と比べると楽天のECの伸び率は劣っています。

例えば、ヤフー、ZOZOなどを傘下にもつZホールディングスのショッピング事業の4~6月期の取扱高は85.9%増となっており、楽天の48.1%増と約1.8倍の差が開いています。

楽天は「楽天市場」や「楽天ブックス」などショッピングECの取扱高が伸びましたが、Zホールディングスでは、ZOZO連結子会社化、「PayPayモール」の拡大といったグループ会社とのシナジー効果、と全社的な費用削減ができた「グループ戦略」の効果が大きかったのです。

株式市場では、この「Zホールディングス」と「楽天」の決算がそのまま反映されています。

Zホールディングスの7月31日決算後、株価は517円から窓を開けて上昇し、直近の高値698円まで35%上昇しています。一方、楽天は8月11日決算発表後、1085円から8月20日の927円まで17%下落しています。これがマーケットの評価です。

Amazonには到底及ばない

コロナの感染拡大の中で、最も恩恵を受けた企業の代表がAmazonでしょう。

米Amazonは4~6月の決算では売上高が前年同期比で40%増の889億1200万ドル(約9兆3900億円)、純利益は同2倍の52億4300万ドル(約5500億円)で、いずれも四半期として過去最高を更新しました。

外出規制によるEC需要を取り込んだほか、在宅勤務の拡大によるクラウドサービス「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」の売り上げも3割伸びています。Amazonと同じ、EC事業を展開する楽天にも好調な決算が期待されていただけに、市場の期待とは少し乖離した結果だと捉えられたのでしょう。

Amazonと言えば、AWS事業の拡大が目を引きます。AWSとは、世界で最も包括的で広く採用されているクラウドプラットフォームであり、Amazonの事業の中でもAWSは多くの営業利益を生み出しています。

楽天は「モバイル通信業界のAWS」版を目指しており、三木谷氏はかねて、「楽天モバイルは、序章」であり、楽天にとって肝心なのは「RCP」(Rakuten Communications Platform)だと説明しています。

RCPを米アマゾン・ドット・コムのクラウドサービス「AWS」になぞらえて、「RCPを世界中の通信会社などに提供し、モバイル通信業界のAWSを目指す」とも話しています。つまり楽天がモバイル事業へ参入したのは、RCPで世界を相手にしたプラットフォームビジネスをすることが狙いだと言えます。