肥満に悩む人たちは「悪循環」に陥っている

ここで、糖質が肥満を招くメカニズムについて簡単に触れてみたいと思います。私たちは食事をすると、血液中に含まれるブドウ糖の濃度、つまり血糖値が上がります。するとその上がった血糖値を下げるために、すい臓からインスリンが分泌され、その働きによって血液中の糖が各細胞に取り込まれます。

そしてこのインスリンには、使い切れなかったブドウ糖を中性脂肪として体に蓄えたり、脂肪の分解を抑制したりする働きもあります。人間がエネルギーを備蓄するうえで不可欠な働きではあるのですが、現代人はここで歯車が大きく狂ってしまっているように思えてなりません。

糖質主体の食事によって血糖値が上がれば、インスリンは大量に分泌されてしまいます。その結果、余ったブドウ糖は中性脂肪に変わり、それらはやがて内臓脂肪や皮下脂肪となっていく。肥満に悩む人たちは、この悪循環から抜け出さなくてはいけません。

糖質を摂るとなぜ、肥満になるのか?

脂は実はダイエットの大きな味方

とはいえ、糖質の中毒性は非常に強く、その依存性はコカイン以上と評する実験結果も存在します。また、PFCバランス(タンパク質、脂質、炭水化物の比率)が2:2:6とする一般的な「バランスのよい食事」を前提とすると、ただ糖質を断っただけでは1日に必要な総エネルギー量の60%を失うことになるので、エネルギー不足に陥ってしまうことも見過ごせません。

この2つの問題を解決するのが、断糖高脂質食にある「高脂質」の部分。つまり、脂です。

カロリーが高く、一般的には「ダイエットの敵」と言われる脂質。そんなものをわざわざ大量に摂るなんて「とうとうこの人は頭がおかしくなったんじゃないか」と思った方もいるかもしれませんね。けれど、脂を摂って痩せる「ハイファット(高脂質)派」を僕が推すのには、きちんとした理由があるのです。

そもそも、ダイエットの指標として食べ物のカロリーを重視する人があまりに多いですが、これはナンセンスです。なぜなら、カロリーはボンブ熱量計の中で燃やした食物と排泄物の差を熱量と仮定しており、実際は体温による代謝と大気中の燃焼は別。それに、各栄養素ごとに代謝・消化吸収率は異なるので、参考にすべき数字ではありません。

カロリーという意味のない数字に縛られ、ダイエットに失敗する人があまりに多いように思います。