「霊魂」=科学的根拠に基づかない存在を疑う風潮は僧侶の間にも
科学万能主義の時代である。社会全体が「霊魂」の存在を疑い、あるいは否定する風潮が広がっている。
NHK放送文化研究所は2018年秋、「宗教の霊的な事柄」に関する調査を実施し、リポートをまとめている。そこからは、10年前(2008年)との日本人の霊魂観の変化が見て取れる。
調査結果では「宗教を信仰し、聖なるものや霊的なものに関心がある」について聞いている。2008年は8.8%であったのが、2018年では5.9%。2.9ポイント減少している。一方で、「宗教は信仰しないし、聖的なるものや霊的なものにも関心はない」が26.6%(2008年)から、31.2%(2018年)と4.6ポイントも増えている。
死そのものを扱い、極楽浄土といった死後世界観を説く僧侶の多くが「霊魂」の存在を否定するはずがない、とも思えるが、科学的根拠に基づかない存在を疑う風潮は僧侶の間にも広がっている。
「供養・鎮魂・除霊などの力があると思う」43.8%
私は2016年から2017年にかけて、日本の伝統仏教教団に所属する僧侶計1335人に「霊魂に関するアンケート調査」を実施(有効回答802人)した。そこに寄せられた回答からは、興味深い考察を得ることができた。その回答の一部を紹介しよう。詳細は拙著『「霊魂」を探して』(KADOKAWA、2018年)を参照していただきたい。
【設問1】「あなたは『霊魂』の存在を信じますか」
――信じる64.8% 信じない17.3% その他18%
【設問2】「あなたは、宗教家には供養・鎮魂・除霊などの法力があると思いますか」
――あると考える43.8% ないと考える14.9% どちらとも言えない41.3%
【設問3】「あなたは、檀家や一般人から『霊魂』『不思議現象』に関する相談を受けて、供養・除霊・鎮魂などの宗教儀式をしたことがありますか」
――ある59% ない41%
【設問4】「あなたは過去、『霊魂』を見たり、『不思議体験』をしたりしたことがありますか」(具体的体験談を記入する自由回答欄も用意)
――ある39.5% ない60.5%