栃木県のある寺には「心霊写真の供養をしてほしい」という依頼がたびたび寄せられる。住職は「霊に引っ張られたくない」と、封筒を開かずにそのままお焚き上げをしている。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳氏は「『霊魂』を疑う僧侶は少なくない。だが、霊魂を操って鎮める儀式ができることが宗教者の存在意義でもある」という――。
仏教寺院における数百の仏地蔵彫像
写真=iStock.com/leodaphne
※写真はイメージです

「幽霊が見えるので供養をして」「心霊写真にお経を唱えて」

「幽霊が見える。怖いので供養してもらえないでしょうか」
「心霊写真が写っていたので、お経を唱えてほしい」

栃木県の浄土宗寺院の住職Kさんの元にはしばしば、霊的な相談が持ち込まれる。心霊写真の場合、プリントして封筒に入れて郵送してもらい、K住職は封を開けずに本堂で読経している。その後、境内でお焚き上げをする。心霊写真の中身を確認しないのは、K住職自身が霊魂に敏感なため、霊的なものに引っ張られないようにするためという。

「最近は少なくなりましたが、若い頃は日常的に霊を見ました。何者かがすーっと壁を通り抜けて庫裏(くり/住職の居住部分)の中に入ってくるのです。子供の頃は怖くて、寺に居たくはなかった。霊はいつも無言ですが、“何かを伝えたい”という思いは、ひしひしと伝わってきます」

「霊魂の相談を親身になってお受けするのも、僧侶の大事な務め」

K住職に除霊の効果についても聞いてみた。

「その後、『出てこなくなりました』などと喜んでいただけることがほとんど。霊魂の相談を親身になってお受けするのも、僧侶の大事な務めです」

日本には7万7000の寺院が存在するが、すべてがK住職の寺のように「除霊」を扱っているわけではない。除霊に関する依頼を受けるか否かは、基本的には住職の判断に委ねられている。また、真言宗や天台宗系などが護摩祈祷などによる除霊が可能である一方で、浄土真宗系の宗派ではそもそも「霊魂」の存在を認めていない。そのため、浄土真宗系寺院では、除霊や祈祷を受け付けないことがほとんどだ。