そもそも生きがいは、なぜ必要なのだろうか

ご相談者のように、いま働き盛りのビジネスパーソンであれば、「やりがいを持ち、頑張って仕事をする」というのが「大人のあるべき姿」と、子どもの頃から教えられて、育った方が多いのではないでしょうか。

看護師・僧侶 玉置妙憂氏
看護師・僧侶 玉置妙憂氏

例えば、会社員であれば、「一生懸命に勉強して一流大学に入り、大学を卒業したら、一流企業に就職して仕事に打ち込み、管理職や役員に出世する……」といったロールモデルが、世間で持てはやされてきたように思います。会社員としての「~せねばならない」が厳としてあるせいで、ご相談者のように、理想と現実のギャップに苦しみ、何のために生きているのかを見失う方を、大量に生み出してきたともいえます。

では、そもそも人間は、仕事の“やりがい”や人生の“生きがい”を持たなければいけないのでしょうか?

“やりがい”も“生きがい”も私たち人間がつくり出した概念です。勤勉であることを美徳とし、「働きがいや生きがいを持たないのは、覇気のないダメ人間」という価値観をつくり上げ、思い込んできただけにすぎません。

コロナ禍によって、働き方や生き方が見直され始めたいま、そうした“たかだか人間がつくり出した価値観”は簡単に揺らぎ始めています。つまり、何か出来事が起こるたびに変わってしまうような価値観に立脚して、「仕事のやりがい」や「人生の生きがい」を探し続ける必要はないように思います。ご相談者も、会社のお仕事に真摯に取り組まれ、日々を積み重ねて定年まで続けていかれるのであれば「十分素晴らしい」という考え方もあるのではないでしょうか。