日本人旅行者が業界再興の鍵

新型コロナウイルス感染拡大を引き金にした渡航制限、外出自粛により、観光業界の根幹である「人の移動」が激減し、事業者の経営を直撃しました。

近年、観光産業の中心となる宿泊業の需要は全体的に拡大していました。特に、ゲストハウス、カプセルホテルのような簡易宿所の需要は急速に拡大し、2014年度から18年度の5年間で約2.6万件から約3.5万件へと9000件以上増加しています。

この背景には近年増加した簡易宿所の多くが「稼働で得た利益を積極的に投資に回し、その投資を新しく建てた簡易宿所の稼働で回収する」あるいは「好調な市況を背景とした経営計画に基づき融資等を受け投資を行う」というビジネスモデルが流行していたことが挙げられます。しかし、今回のようなパンデミックや災害で想定外のトラブルが発生し、宿泊施設の稼働がストップした場合、資金繰りがショートしてしまうという問題点がありました。

新型コロナ以前の日本は「インバウンド絶好調」と言われていました。外国人観光客が呼び込めない現状では、観光業の復活は難しいと思われるかもしれません。

しかし、旅行消費額を見ると、インバウンド比率は全体の約17%程度で、残りの約8割は日本人旅行者による消費です。この8割が早期に回復すれば、観光産業は比較的早く立ち直るのではないかと予測しています。