トヨタと日産はアリとキリギリス

業界トップのトヨタ自動車は2021年3月期の営業利益予想を5000億円と発表した。20年3月期の営業利益が2兆4000億円だったことからすれば、数字としては大きく落ち込んでいる。それでも、この状況下で業績予想を出したことは高く評価できる。

5000億円の利益予想については、市場も好意的に捉えている。発表した数字が仮に2000億円だったとしても、市場は評価していただろう。現時点で黒字の見通しを発表したことが、市場に安心感を与えているのだ。

豊田章男社長の「販売台数が700万台になっても赤字にならない計画です」という言葉にも驚いた。リーマンショックのときトヨタは大きな赤字を出したが、700万台という台数は当時を下回る数字だ。それでも利益が出せるのは、地道な固定費の削減によってこの10年ほどで劇的に収益構造が改善したということだ。

トヨタは「モビリティカンパニー」を掲げるなど、ここ10年で自動車だけでなく社会全体を語る企業に変わってきた。自動車産業自体はあまり変化していない中で、自ら変わろうとして歩みを進めてきた自覚や責任感が、今回の業績予想の発表や収益構造の改善に繋がっていると感じる。今後大きく成長するのではないかと予感させる。