優秀なCIO(情報戦略統括役員)はIT知識をもっているというよりも、むしろ社内の現状を熟知したうえで経営戦略につながるIT戦略を立てられ、戦略を実行するためには、どの部署に何を依頼すればうまくいくかを理解している。これがビジョン構築力である。
ウェブサイトの利用者は、顧客だけではない。IR情報を求める株主、就職希望者なども含まれる。ウェブサイト利用者それぞれの目的に応じて、必要な情報を十分に提供しようとすると、そのコンテンツは企業や商品の紹介、新商品のプロモーション告知のみならず、IRや求人情報など非常に多彩になってくる。いかに効果的な情報の出し方を考えられるかが重要になる。
技術面では、ウェブサイトは何千、何万ものページから成り立ち、構造が複雑だ。使い勝手のよさが求められるので、掲載すべき情報量が多くなればなるほど、情報を整理する高い能力が必要になる。建築業界でいうと、超高層ビルを建てるようなもの。2階建てを建てるのとは違った知識が必要になる。人の動線をどうつくるか、非常口をどこにおくか、エレベーターをどこにつくるか……。さまざまな要素がからむなかで、論理的に情報を整理できる能力が必要なのである。
しかも、昨今は、PCだけでなく、モバイルサイトを展開する企業も増えている。Eコマースを付随させたなら、決済・配送のためのシステム構築なども必要だ。
ウェブ担当者はこのように多岐にわたる業務に従事し、顧客と企業の距離を縮め、顧客満足を強化する非常に重要な任務を背負っている。
が、現実には、そのことが理解されず、厳しい状況におかれていることが少なくない。ウェブ担当者と話すと、膨大な業務量に頭を抱えていることに気づく。社員数2000~3000人規模の企業でもウェブ担当者は3人程度ということもある。
しかも、単独での決裁権限や予算をもたされることはなく、広報部や、宣伝部、システム部の中の一グループとして配置されていることが多い。決裁権限がなく、ウェブサイトの運営の方針が不明確であることは、間違いなく仕事が滞るひとつの要因となる。
企業は1990年代から2000年代の初めにかけて、一斉にウェブサイトを立ち上げた。当時は、ウェブサイトへのアクセス権限があいまいで、営業部、営業企画部、マーケティング部などがそれぞれ自由に手を入れていた。そして、そうであっても大きな問題も生じなかったのだ。
しかし、現在ウェブサイトを使って顧客満足を上げるためには、企業がもつ情報を一元化し、発信することが不可欠になる。
さもないとウェブサイトという顧客にとってもっとも身近なツールから出るちぐはぐな情報によって顧客は混乱してしまうことになる。