OECD諸国には不利な環境規制
また、「誤ってビニール袋(ポリ袋)を食べたウミガメが死んだ」といった類いのエピソードも、そのままうのみにすべきではないようだ。2000年以降、神奈川県に漂着したウミガメの死体を累計500頭以上解剖した団体による、「いまだにビニール袋が死因と断定できるウミガメには出会っていません」との報告もある。
レジ袋に限らず、一時やり玉に挙がったストローなど、プラスチック関連の規制にはなぜ今? といいたくなる。近年クローズアップされてきたマイクロプラスチック——大きさ5mm以下の微細なプラスチックごみ——もそうだ。
2004年に科学誌で取り上げられたのが端緒とされるが、歯磨き粉の研磨剤などに含まれていたり、さまざまなプラスチック塊の破砕や劣化によって生じるとされ、漂流の過程で表面に吸着した化学汚染物質が海洋生態系へ取り込まれる原因になる可能性があるほか、誤って食べた海洋生物の体内に取り込まれることによって、海洋生物が害を受け、炎症反応、摂食障害などにつながる場合があるというが、先述のダボス会議まで誰も知らなかったわけではあるまい。
少なくともすでに急速な経済成長を終え、それなりに環境対策を進めているOECD加盟国、特にその優等生である日本にとって、この先環境問題に絡めて新たな規制をかけられるのは、CO2削減目標は今も発展途上国と同じ扱いの中国など、最近まで野放図に驀進し、膨大な廃棄物を今も出し続けている新興大国との競争において、伸びしろが少ない分ハンディを負うことになる。
本気で環境問題に取り組もうとする国は…
逆にいえば、新興国に環境問題による規制という足かせをはめるのは、新興国とそこに巨額の投資を行う欧米の資本家たちにとっても望ましくないことになる。トランプ米大統領なら罵倒するスウェーデンの環境運動家グレタ・トゥーンベリ氏が、世界最大のCO2排出国である中国を批判しないのも、何かしら理由のあることなのかもしれない。
前出のロンボルグ前所長は、大陸から海に流入するプラスチックごみのうち、OECD加盟国のものは5%以下。半分は中国・インドネシア・フィリピン・ベトナムの4カ国によるものであり、とりわけ中国のものが27%以上と指摘。重要なのは、この4カ国の廃棄物管理を注視することだと主張した。
確かに、これだけのデータが明らかでいながら、CO2をはじめとする環境問題について新興国を追及しないのなら、本気でプラスチック問題、環境問題に取り組もうという国が、本当は世界中でどこにもいないのだということになってしまうのだが……。