微生物を活用すれば、ゴミ処理場に集められた一般廃棄物を丸ごとガスに転化し、エタノールを作り出すことができるという。米国のベンチャー企業「ランザテック」は、この技術を世界中に売り込んでおり、三井物産や全日空、積水化学といった日本企業とも提携済みだ。いったいどんな企業なのか——。

※本稿は、斉藤徹『業界破壊企業 第二のGAFAを狙う革新者たち』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

水を飲む女性
写真=iStock.com/kieferpix
※写真はイメージです

排気ガスを微生物に食べさせて、エタノールを生成

LanzaTech(ランザテック)
本社 シカゴ
創業年 2005年
サービス 微生物のガス発酵技術
事業の着眼点 微生物のパワーでゴミから資源を生み出す

LanzaTechのテクノロジーを一言でいうと、排気ガスやゴミから新しいエネルギー資源を生み出すというもの。聞いただけで、革新性がきわだつ技術ですね。

排気ガスのなかには一酸化炭素、二酸化炭素、水素など有害なガスが多く含まれていますが、日々生活したり、工場などで何かを生産すれば、これらを大気中に放出するしかありません。世界中で盛んに環境保護が叫ばれていますが、「ガスの排出量を減らそう」というメッセージが中心です。

しかし、LanzaTechのテクノロジーはまったく異なるアプローチで、こうした排気ガスを微生物に食べさせることによって発酵させ、エタノールを生成してしまうというものです。生成されたエタノールは自動車の燃料はもちろん、航空機の燃料、いわゆる「バイオジェット」などのクリーンエネルギーへと活用されていきます。

まさに、地球環境問題とエネルギー問題を斜め上から一気に解決してしまうような驚異のテクノロジー。技術革新で世界を一変させるイノベーション企業です。

分別していないゴミを丸ごとガスに転化

LanzaTechの事業フィールドはまさにグローバルで、中国の製鉄所では、工場から排出されるガスを利用して年間300トンのエタノールを製造するプラントが稼働しており、インドの石油会社やインドの政府機関との共同研究・開発も進んでいます。

また、積水化学との共同研究では、ゴミ処理場に集められた一般廃棄物を分別することなく丸ごとガスに転化し、エタノールを作り出すことを世界で初めて成功させています。

ちなみに、エタノールはエチレンに変換できるので、そのエチレンを使ってペットボトルなどの容器を作ることも可能です。

これまで世界中が化石燃料に依存しており、化石燃料を使用することでエネルギー資源が枯渇する、いわゆるエネルギー問題が起こり、同時に、地球環境を汚染する問題も起こっていました。しかし、LanzaTechのテクノロジーを使えば、一度取り出した資源、炭素は何度も再利用可能となり、本来であれば「地球の環境を汚染している物質」がさらなる燃料となり、持続可能性が実現されるのです。