農作物の鮮度を保つコーティング剤を開発
本社 ゴリータ(カリフォルニア)
創業年 2012年
サービス 食品コーティング
事業の着眼点 農作物の鮮度が長持ちするようにパウダーでコーティングをする
次に紹介するApeel Sciencesも、非常にユニークなテクノロジーを武器にビジネスを展開している企業です。
パウダー状の薬剤を水に溶かし、その液剤を収穫された農作物にスプレーすることで、鮮度が保たれるという技術を開発したのです。
Apeel Sciencesのホームページには興味深い比較実験の結果が示されています。
あるレモンをApeel Sciencesのコーティング剤をスプレーしたものと、何もしないもので比較すると、50日もすると通常のレモンの方は変色し、どす黒く腐敗が進んでいくのですが、コーティング剤をスプレーした方はほとんど収穫したてと変わらない、鮮やかな黄色のままの状態を保つというのです。
レモンよりもさらに腐敗が進みやすいイチゴで試してみると、さらにはっきりわかります。コーティングされていない方は3日もするとカビが生え始めているのに対し、コーティングされたイチゴは5日経っても、ほとんど変化が見られません。
Apeel Sciencesは、それほど決定的な違いを見せるコーティング剤を開発したというわけです。
原料は野菜や果物の「皮や種」
しかし、これだけ聞くと、「そんな危険なもの、人体に影響はないのか?」「その化学物質は大丈夫なのか?」とむしろ訝しんでしまいます。きっと多くの人がそう感じるのではないでしょうか。
この点もApeel Sciencesの技術の特筆すべきポイントです。彼らが開発したコーティング剤は完全に自然由来のもので、収穫された野菜や果物のなかでも、本来は人の口に入らない皮や種などからオイルを採取し、原料としているのです。
収穫された野菜や果物と同じ成分のものを吹きかけているので、安全性にまったく問題はないというわけです。事実、アメリカ食品医薬品局のガイドラインもきちんとパスしています。創業者のジェームズ・ロジャース氏がこのアイデアを思いついたきっかけは「鉄の錆」だったといいます。
鉄は酸化して錆びていきますが、これに薄いコーティングをして錆びにくくしたものが、いわゆるステンレススチールです。これを農作物に転用したのです。
食品をダメにする原因は水分の減少と酸化。それを防ぐために、安全な薄い膜をまとわせたという発想なのです。