JA貯金は「100兆円」でひと区切り、無理して集めない

——100兆円目標達成後もJAバンクの貯金残高は増え続けている状況です。高齢化、相続で流出するかといわれていても案外底堅く推移しています。向こう3~5年、どのような動きを予想していますか?

JA貯金の伸び率自体は2%台から1%を切るくらいに落ちています。地域によっては純減も出ています。しかし、為替と同じように予測は難しいです。構造的には相続による貯金流出という問題もありますが、一方で、いまはだれもおカネを集めるひとがいない。以前なら郵貯、地銀が獲得競争していたものですが。構造的に流出の要素があっても流れ出し方が強いわけではありません。トータルでマイナスになるところまでは見込んでいません。特にゼロ金利下であれば、向こう3~5年の間はマイナスになることは多分ないと思います。

——JAからの調達コストは高く、残高も減らない。そのコストにもっとメスを入れるべきではありませんか?

100兆円はひと区切りです。一番高い金利を付けている部分はキャップ(上限)を入れ、それ以上に還元額、実額が増えることはありません。水準を下げるのとキャップを入れてコントロールします。貯金を集めてうちが運用すれば、海外で運用すれば利益が出るというパターンは完全に終わったので、少なくとも上限という形でお願いをして、会員から反発も受けながらも受け入れていただきました。貯金を集めるためのJAによる「上乗せ金利」のような施策がかなり落ち着いてきて、事実上、上乗せはほとんど無くなり、調達コストも落ち着いています。「無理して集めない」というふうに変わっています。

撮影=チーム「ストイカ」

上乗せ金利のままだと「世界で一番高い金利」になりかねない

——上乗せまでして貯金を集めていたのは、「100兆円」の目標を掲げたからでは?

そういうことをあおった側面もあるでしょう。だからこそ質を変えなければならないのです。「朝令暮改」といわれても、系統預け金の奨励金(利回り)を2019年度から4年かけて2018年度実績0.56%(加重平均)から0.1~0.2%段階的に下げていきます。世の中がマイナス金利で、最も高い部分で0.7%台のところからから0.5%くらいに下げて、0.5%も利息があるのはアメリカ10年もの国債くらいですから、世界で一番高い金利になりかねないので、そこは抑制していかねばならないと思っています。

——JA系統預け金の利回りがどのようなルールに基づいて計算されるかを公表してもよいのでは?

これは当事者間で決める協議事項なので、事実上、開示対象ではないと私は思います。全体のディスクロージャーの中で、(預金のコストを)平均するとこうだろうという推測はできるだろうと思います。

——代理店方式を選ぶJAは少ないようです。

農中が信連を統合している県は同じ水準、信連のあるところは各信連がそれぞれ自分のところの地域の事情、コストを勘案しながらJAに手数料案を示しました。率的には郵貯の0.4弱くらべて高い代理店手数料になるはずですが、それを選択する農協はほとんどありません。