NBは短期決戦、PBは長期ブランディング

——佐藤オオキさんはロッテのブレスケアガム「ACUO」や日清の「ラ王」「麺職人」など、NB(ナショナルブランド)のデザインも手掛けています。NBとPBにはどんな違いがあると感じましたか。

時間軸が違いますね。NBは短期決戦。新製品が棚に並んで、POSデータでどれだけいい数字が出せるか、という勝負。いかに瞬時に情報を伝えるか、刺激を与えるか。それがデザインに求められます。

一方、PBは長期戦。店舗全体を面として捉え、そのブランドの世界観を表現するために、お客様やクルーさんの意見を取り入れながら、改善し変化させていかなければいけないものです。

——機動的にデザインを変更していくお仕事は、これまでにもありましたか。

長く愛されるブランドは常にテコ入れをしています。たとえばACUOではマイナーチェンジを20回くらいやっています。ただ、ACUOは基本的にクリアブルーミントとグリーンミントの2種類なんですよね。PBのように700種類を同時に運用するのは初めてです。物理的にも大変ですし、売り場の状況も刻々と変わります。非常に消費カロリーの高い仕事ですが、これまでやってきたことの延長であることは間違いないと思います。

「プレミアムライン」を作らなかったワケ

——PBでは価格帯によってデザインを変える手法が一般的です。ローソンのPBはそうした手法を採っていませんが、なぜでしょうか。

2つ理由があります。1つはプレミアムラインという手法はすでにあるからです。どれぐらいの価格帯だと、どういう客層が購入して、どんな数字が取れるというのは、ある程度読める。だからあえて今やる必要はないと考えました。

もう1つは、「お金を持っている人が、高くてプレミアムなものを買う」というのは、ちょっと消費者のマインドとして違うのかなと思っているんです。「少しでも安いものを買おう」とか、「少しでも機能があるから買おう」といった単純な購買動機をもつ人は減っていると感じます。

例えば、「自分はこういう考え方を持っている企業を応援する」「こういう思いで作られているからちょっと高いけど私はこれを買って使う」というように、モノを買う事が自分を表現し、自分の立ち位置を定める。こういった買い方がこれから加速していくとしたら、本当の意味での豊かさや贅沢が何なのかを洗い出してから、丁寧に戦略を練っていきたいと考えました。

竹増社長はデザインに関するすべてのミーティングに参加していた。「これからそういう経営者が増えるのかなと思いました」と佐藤さん。
撮影=今村拓馬
竹増社長はデザインに関するすべてのミーティングに参加していた。「これからそういう経営者が増えるのかなと思いました」と佐藤さん。