感染をお詫びする日本人、自分が悪いと思わないアメリカ人

特効薬やワクチンが存在しない現時点においては、コロナの持つ強い感染力を理解し、感染拡大防止のために「自分が移らない、他人へ移さない」という意識を一人ひとりが持つことが重要です。この意識と対策を言語化したものが「ソーシャルディスタンス」「3密回避」というワードと言えるでしょう。

日本においては、感染者が「自分の意識が甘かった。社会に迷惑をかけて申し訳ない」と謝罪するケースが少なくありません。感染したことが報道された有名人は、メディアに向かって「申し訳ありませんでした」と深くお詫びをします。これは日本人特有のメンタリティから来るものと感じます。

大阪大学の三浦麻子教授らが今年、3月から4月にかけて行った調査によると、「新型コロナウイルスに感染する人は自業自得だ」と回答したのは、日本11.50%、米国1.00%という結果が出ています。この調査における母集団についていえば、アメリカ人は「コロナに感染したのは自分が悪い」と考える人が日本人の10分の1以下しかいないということが分かります。

「Go To トラベルキャンペーン」でも旅行に行かない

「感染は自業自得」と日本人が他国に比べて感じる理由として、同氏は「公正世界仮説」の可能性を挙げています。これは「良いことは良い人に起こるし、その逆も然り」という考え方のことで、新型コロナ感染という悪いことが起こったのも、その人が悪いからだとするものです。日本では感染者の自宅に投石行為などが起こっています。このような感染者バッシングには「感染した人=その人が悪い」という意識が寄与していると考えられます。

日本においては「感染すると自分が悪人になってしまう」とメンタリティがあるとするなら、それが感染拡大防止にも一役買っていると推測できるのではないでしょうか。政府が落ち込んだ観光業への景気対策としてかかげた「Go To トラベルキャンペーン」も、日本人としては大手を振って利用しづらい雰囲気があります。「日々、感染者が増加している日本のコロナ禍でのんきに旅行にでかけ、感染したら迷惑をかけてしまう」と不安で旅行にいかない、という人も多いと考えます。実際、リサーチ会社のNEXERが行った調査によると、約7割の人が「Go To トラベルキャンペーンでも旅行に行かない」と答えています。これは日本人の「公正世界仮説」を考えると、納得感があるといえるのではないでしょうか。

アメリカ人には「感染したら迷惑を掛ける」という意識が日本人より薄弱と考えるならば、パーティー参加への抑止力や、マスク装着、ソーシャルディスタンスへの協力意識がないことも理解できる気がします。