就職試験や採用方式の本質的な問題とは

パソナ方式の採用率が高い理由
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パソナ方式の採用率が高い理由

第二は、プロの判断力の的確さである。派遣の対象となったのは、人材派遣のプロであるパソナのお眼鏡にかなった候補者である。しかも、この人ならばこの会社に受け入れてもらえるはずだとパソナが判断した会社に派遣されている。新卒者を支援する教育も行われている。パソナは営利企業だからこの判断を間違えば損をする。うまく適合する人材を派遣すれば、パソナの信用が高まり、他の派遣の仕事も受注できるかもしれない。うまくいけば褒賞がもらえ、失敗すると損失をこうむるというリスクを負っている人々の判断は、判断の正否が自分自身の損得にかかわらない人々よりも、より真剣なものとなる。

第三に考えられるのは、人と会社とのマッチングには、かなりの幅があるということである。会社の仕事の多くは、このような人でないとできないという性質のものではない。その仕事をうまくする能力を持っている人材は多様なはずである。この場合には、最適な人を見つけることよりも、仕事に合った能力の開発にお金とエネルギーを使うほうが合理的かもしれない。

第四の理由と考えられるのは、実際に働いてみると、採用側も被採用側も、これまで気付いていなかった魅力や能力に気付いく可能性があることだ。採用側は、面接や適性検査ではわからなかったポテンシャルを人々が持っていることに気付くだろうし、被採用側も、会社や仕事の魅力について新しい発見をしている可能性がある。

これらの理由を考えると、就職試験や採用の方式に関して考えなければならない本質的な問題があることがわかる。

まず考えなければならないのは、これまでの採用決定方式の限界である。これまでの採用方式は、就職しようとする人々が企業の情報を入手し、その情報をもとに気に入った会社の採用試験を受けるという方式である。この方式は、インターネットによる情報入手や応募が行われるようになるとともに、企業の側も応募者の側も情報過剰に直面し、うまく機能しなくなってきた。