日中の過去の事例から見る韓国の債務問題のヤバさ

当面、韓国の輸出が増加に転じる展開は期待しづらい。韓国経済が景気後退に陥る中で輸出が減少基調となれば、家計の債務負担は増大するだろう。状況によっては、不良債権が増加し、金融システム不安などかなりの混乱が広がる恐れがある。

昨年末時点で韓国の民間(家計と金融機関を除く民間企業)債務残高はGDPの198%に達した。わが国の経験に照らすと、家計を中心とする韓国の債務残高は維持困難な領域に入りつつある。

1989年後半の資産バブル絶頂期、わが国の民間債務残高はGDPの200%に達した。1990年に入ると株価が急落し、1991年7月には不動産価格が下落し始め、資産バブルは崩壊した。その後、わが国経済は長期の停滞に陥った。中国でも民間債務がGDPの2倍近くに膨れ上がるにつれて成長率は鈍化し、債務問題が深刻化している。

日中の経験から示唆されることはGDPの2倍程度に民間の債務残高が達すると、経済と金融システムの不安定性が高まりやすいことだ。

韓国の場合、状況はさらに深刻と考えられる。家計部門の債務残高はGDP対比で96%、可処分所得対比で180%に達している。その水準は世界的に高い。

新型コロナウイルスの感染拡大によって韓国銀行は追加の利下げに踏み切り、金融政策は限界を迎えている。財政支出にも限度がある。政策発動余地が狭まる中で経済成長のエンジンである輸出が減少トレンドをたどる場合、債務リスクは追加的に高まるだろう。

かつて経験したことがない混乱に陥る可能性

1つのシナリオとして、ワクチンの開発が期待通りに進まないなどして世界的に新型コロナウイルスの感染が深刻化し、それと同じタイミングで米中の対立が先鋭化すれば、韓国経済はかつて経験したことがない混乱に陥る可能性がある。

そうした展開が現実のものとなれば家計を中心に債務残高は維持困難となり、バランスシート調整と不良債権処理というかなりの痛みを伴う対応が不可避となるだろう。

輸出が減少する中で債務残高が積み上がっていることを考えると、今後、韓国経済がより厳しい環境を迎える展開は排除できない。

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