家計の債務残高とともに急騰したソウルの不動産価格
もう1つ懸念されるのが家計部門だ。近年、韓国では家計の債務残高が増えた。データを確認すると、2012年以降、韓国の輸出は伸び悩み、経済成長率は3%前後に低下した。景気を支えるために韓国銀行(中央銀行)は基本的には緩和的な金融環境を重視した。
低金利環境下、家計や自営業者の借入が増えた。それが示唆することは、輸出主導による経済成長の向上が難しくなる中で、家計は金利の低下に支えられて借り入れを行い、日々の生活水準の維持を目指したことだ。中小企業などにも同様のことがいえるだろう。
朴槿恵(パク・クネ)前政権の経済政策も債務残高を増加させた。朴前政権は景気刺激のために不動産市場の活性化を重視し、住宅ローンの貸し出し規制を緩和した。低金利環境による“カネ余り”と不動産価格上昇への期待が重なり、多くの人が資金を借り入れて不動産を購入し始めた。
特に、政治と経済の中心地であるソウルのタワーマンションをはじめとしたマンション価格の上昇が鮮明となった。価格の上昇は不動産市場への投資資金の流入に拍車をかけ、“買うから上がる、上がるから買う”という強気心理が連鎖した。
金融機関は価格上昇が期待される不動産を担保にとって積極的に貸し出しを増やし、債務の積み上がりとともに首都圏の不動産価格は理屈では説明できないほどに上昇している。
文在寅の経済運営は持続可能ではない
また、文在寅大統領の経済運営も家計の債務増加の一因だ。文政権は経済成長率を大幅に上回るペースで最低賃金を引き上げ、人手不足が深刻化する中で労働時間の短縮を実行した。その政策は中小企業などの収益力を低下させ、雇用を喪失させた。若年層を中心に所得・雇用環境は悪化し、家計の債務依存度は追加的に高まっている。
端的に、2012年以降、韓国は中国経済の成長の限界や米中の対立先鋭化などによる潜在成長率(経済の実力)の低下を、債務に依存した消費などの維持などによって糊塗したといえる。それは持続可能な経済運営ではない。
現在、現代自動車の業績悪化やイースター航空の救済が難航していることを見ても、外需が雲散霧消した状況は韓国にとってかなり厳しい。