管理社会を望む世間の風潮に危機感
CDが売れない時代になってからは、ミュージシャン、アイドルの活動は生のステージがメインとなっていた。実際、ここ10年のライブハウスは活況で、ロフトも2月に下北沢「Flowers LOFT」をオープンしたばかりだった。
「8000万円くらいあった月の売り上げが、ほぼゼロになりました。でも、毎月、家賃、人件費、借金返済などで約4000万円の出費がある」と加藤氏は言う。
「現在、社員はほとんどリモートワークです。うちは全員が営業職のようなもので、自分でイベントをブッキングして、いくら売り上げるかが勝負です。スマホ一台あればどこでも仕事はできますから」
休業要請は解除されたが、演者もお客さんも慎重な人が多く、7月もイベントのない日が続いている。できることといえば、オンライン企画のライブ配信だ。
「今、配信が多いのは、経済産業省の支援策が配信前提だからです。もとはクールジャパン推進の仕組みだったJ‐LOPなどの助成制度をコロナ対策に替え、延期した公演をオンラインで配信したら助成が半分受けられるようにしたのです」
2000円で600人を集客するような配信イベントもあるが、毎月の出費を考えれば焼け石に水。新型コロナとの闘いは年単位で長引くと加藤氏は予想する。ライブハウスは50%の収容制限が続く限り、商売は成り立たない。
「コロナで世界は変わるといわれていますよね。リモートワークなどが広がるのは間違いないでしょう。でも、人間の本質は変わらない。1m以上人に近づかず、握手やハグも禁止され、家に閉じこもって生きていくことが、はたして幸福なのでしょうか?
メディアは正しく怖がることが大切と言いながら不安を煽り、いつのまにか、私たち市民も安全のためなら国に管理される社会を望む風潮が強くなっていく。世界は変わったと言いすぎるのも危険だな、という気はします。屋外のイベントも制限されていますが、どうなんでしょう。ウイルスの実態から乖離した感染対策も多いんじゃないですかね」
9月に開かれる予定の「スーパーソニック」「グリーンルームフェスティバル」といった大型の野外フェスがどうなるかを加藤氏は注目している。