日本経済に大打撃を与えている新型コロナだが、どこよりも早く経営のピンチを迎えたのが、最初にクラスターとして大々的に報じられた屋形船、スポーツジム、ライブハウスだ。危機的状況に経営者は何を考え、どう判断したのか。

コロナ騒ぎに追い討ちをかけた米国本社の破産宣告

「倒産を意識しました」と語るのは「ゴールドジム」を運営するTHINKフィットネスの手塚栄司社長だ。

2月の半ばの愛知県名古屋市に続き、千葉県市川市のスポーツジムでクラスターが発生したことで、筋トレの聖地と呼ばれるゴールドジムも打撃を受けた。休会、脱会者が相次ぎ、4月の緊急事態宣言による休業要請で、売り上げがほぼゼロとなった。

しかも、緊急事態宣言の延長が発表された5月4日、アメリカでゴールドジムを運営するGGIホールディングスが破産宣告をしたというニュースが追い討ちをかけた。

ゴールドジムは1995年7月に日本第1号店をオープンして以来、現在93店舗(フランチャイズを含む)と順調に店舗を拡大してきた。
撮影=遠藤成
ゴールドジムは1995年7月に日本第1号店をオープンして以来、現在93店舗(フランチャイズを含む)と順調に店舗を拡大してきた。

「世界中に約700店舗あるゴールドジムの大半はフランチャイズ契約。うちも資本関係はありませんから破産申告の影響は全くないのですが、金融機関や取引先からは大丈夫ですか? と問い合わせがきました」

売り上げはなくても、毎月の家賃・人件費といった固定費はかかる。「大変なときだから、と家賃を値下げしてくれる大家さんもいれば、一切応じてくれないところも。さまざまでした」

2カ月で約15億円の赤字。5月は融資のお願いに金融機関を駆け回った。「緊急事態宣言が解除され、6月から営業できるようになりましたが、休業が続いていたら、もうダメかもしれないと思いました」と手塚社長は振り返る。

「休館中は、半分の社員には出社してもらい、再開したときにお客様に気持ちよく、より安全な状態でお迎えできるように、徹底的な清掃とメンテナンス、マシンの入れ替え、換気や飛沫防止などの感染防止策にあたってもらい、あとの半分には7割を支払い、お休みしてもらいました」

ジムはフリーで契約しているインストラクターも多く働く業界だ。「レッスンがないからお支払いしないというのでは、彼らの生活が成り立ちません。フリーとはいえ我々に協力してくれている仲間ですから、最初は10割、そして7割、その後も5割と少ないですが支払い続けました」