どうすれば組織のチームワーク力は育つのか。昨年のラグビーワールドカップ日本代表のコーチを束ねた中竹竜二さんと、全国に360教室以上を展開する花まる学習会の高濱正伸さんの対談をお届けしよう――。

※本稿は、『プレジデントFamily2020年夏号』の記事を再編集したものです。

マディラグビー
写真=iStock.com/Kolbz
※写真はイメージです

なぜラグビー選手は自分を犠牲にして他人を生かすのか

【高濱正伸さん(花まる学習会代表、以下高濱)】2019年のワールドカップは感動しました! 日本代表には外国出身者が半分近くいて、さまざまなバックグラウンドの選手が集まっていながら、一丸となって戦っている姿に感動をもらいました。格闘技のような激しさがありながら、選手がお互いに支え合っていましたね。

【中竹竜二さん(日本ラグビーフットボール協会理事、以下中竹)】ラグビーというスポーツは、フェアネス、つまり公平さの精神を大切にしています。試合中には興奮もするし、相手のプレーに腹が立つこともありますが、でもそこを我慢して、正々堂々と戦う者こそがかっこいいという価値観です。

【高濱】どんなに熱いプレーをしても、ノーサイドの合図で、相手チームの選手をたたえる姿は、紳士的で、美意識の高さを感じました。以前からチームスポーツには、人間を成長させる力があるなと感じていたのですが、ラグビーはいいスポーツですね!

【中竹】ラグビーにはもう一つ大事な精神があります。それは“利他の心”。自分が犠牲になってでも味方を生かすという精神です。そして生かされる側も犠牲になった人をリスペクトする。

【高濱】決勝トーナメント準々決勝の南アフリカ戦でも得点した田村優選手は得点ランキングでトップになったとき、個人の記録については「興味はない」と真顔でコメントしていましたね。野球のホームランの数や、サッカーのシュートの数みたいに、選手個人の記録は競わないんですか?

「トライした人が喜んではいけない」という文化

【中竹】ラグビーでは田村選手のような感覚が普通ですね。自分だけの力でトライしたわけではないですし、「トライした人が喜んではいけない」という文化です。

【高濱】それはすごい! 自分だけで得点したのではなく、みんなで得点したという考えなんですね。そういう利他の気持ちってどうやって育つのでしょうか。

【中竹】たとえば主将を務めたリーチマイケルはプレーヤーとしてはすごいけれど真面目なので、時には背負いすぎちゃうところがあります。ほかの選手たちは、彼をリスペクトしているけれど、苦手なところはみんなで補い合おうという感覚はあるんじゃないでしょうか。有名な選手でも、強気に見えて実はいい加減な部分もある人だっています。ごつい選手が向かってきたら逃げることもあるんですよ。メンバーはそれをわかって補っている。「おまえ、あそこで逃げただろ」と指摘すると「本気でぶつかったら体壊すから怖かった」なんて素直に言いますからね。

【高濱】お互い、人の力を借り合って、みんなで成果を上げようという感覚なんですね。

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