また、海沿いの商業施設に入居する大洗店は、もともと東日本大震災直後の津波で建物が被害を受け、競合コーヒー店が撤退。地元から陳情を受けた誉志男氏が入居を決断した。初代店長を任された小泉準一氏(現・取締役)が店舗運営とバリスタ教育に注力。前述の安バリスタらが育ち、最近は鈴木氏が仕掛けた「マリー様のモンブランケーキ」が好評だ。

コーヒーを愛する従業員が多く、主力商品であるコーヒー豆も売れる。特に本店では、注文したコーヒーの味に気に入ったお客が、200グラムで1200円以上するコーヒー豆(銘柄によって価格は異なる)を買い、自宅でも楽しみ、贈答にも利用する。

コロナ自粛中も通販が伸びた。「4月と5月は対前年比で約3倍、通販で豆が売れました」(鈴木氏)。数字は非公表だが、休業した品川店と大宮店の売り上げに匹敵した、という。

こうした社風や果敢な取り組みが、新商品の背景にあったことも指摘しておきたい。

アニメを再現した「マリー様のモンブランケーキ」

ネット通販でもコーヒー豆を売ってきた同社だが、コロナ自粛を機に、新たな商材を投入した。前述の「モンブランケーキ」を冷凍にしたのだ。

これは、大洗が舞台の人気アニメ「ガールズ&パンツァー」(ガルパン)の登場人物にちなんだものだ。ガルパンは、戦車同士の模擬戦「戦車道」の全国大会で優勝を目指す女子高校生の物語で、コアなファンも多い。

鈴木氏は、登場人物のひとり「マリー様」がモンブランケーキを食べるシーンにヒントを得て、独自に再現した笠間栗のモンブランケーキを販売(※)。ツイッターでも情報発信を続けたところ人気が沸騰した。コロナを機に、これを冷凍ケーキにしたのだ。

※現在は通販での販売は終了しており、大洗店と水戸駅店で提供。

「超高級冷凍モンブランケーキで1個1500円。毎日20個限定でしたが、いつも完売。コロナ自粛中の50日間で累計1000個が売れました」(同)

実際に注文した人によると、クール便で届き、中にはケーキのほかに1杯取りのドリップパック2つと金メダルチョコが同封されていたという。

同社はこうした“タダコーヒー”も得意だ。ドリップパックや1個250円の金メダルチョコは、時にイベント時などで無料配布する。受け取った人は持ち帰って飲食するまで記憶に残る。つまり宣伝広告の役割も果たす。

商品の品質あってだが、こうした「ふるまい」は顧客満足度の向上につながる。