日本はリーダーシップを発揮すべき
すでに香港では赴任する従業員の安全を確保するため、海外企業が「香港回避」を進め、欧米メディアの記者たちも異動させる動きが見られている。香港空港管理局が発表したところによると、香港国際空港の6月の旅客数は前年同月比99.1%減となった。格付け会社は金融の中心地だった香港の位置付けが損なわれるリスクがあると指摘し、他の格付け会社も香港の「格」を引き下げている。
それにもかかわらず、中国指導部は超大国となった自負から現状認識能力を欠いているのか、習国家主席が海外企業に「われわれは改革と開放を深め続け、中国と外国の企業にとってより健全な事業環境を提供する」「中国にとどまり発展するとの決定は、正しい選択だ」と呼び掛けており、その「イタさ」が十分すぎるほど伝わるだろう。思春期かと思わせるようなレベルの反抗として、米発祥のハンバーガーチェーン「バーガーキング」での消費期限切れ食品販売疑惑を報じ、批判しているというのは、あまりにもな話である。
ただ、一方で9月の香港立法会(議会)選挙に「介入」する動きを見せ、民主派候補への資格取り消しなどに踏み切ることが懸念されている。7月21日には、抗議活動に参加していた民主派の議員が香港国家安全維持法違反で逮捕されたばかりだ。香港民主化運動のリーダーは同日のNNNのインタビューで「香港市民は早朝に何の前触れもなく突然逮捕されることを常に心配している。世界はこの問題をきちんと認識し、中国に対して人権侵害を是正するよう強く働きかけるべきだ」と訴えた。日本に対しては「アジアの中でリーダーシップを発揮すべきだ」と語っていたが、その悲痛な声と中国をめぐる情勢を日本政府はしっかりと受け止めていないのではないか。
鈍感すぎる「外交下手」安倍晋三
日本といえば、いまだ習国家主席の国賓としての来日計画を検討し、安倍晋三総理は7月22日のコロナ感染症対策本部で、出入国を制限している中国や韓国などとのビジネス往来再開を交渉するよう指示した。入国制限が遅れに遅れたことはすでに記憶にないようで、コロナ感染者が増加しているにもかかわらず、観光事業「GoToトラベルキャンペーン」をスタート。感染再拡大の理由は国の無策を棚に上げて東京都の小池百合子知事の責任になすりつける始末で、その一貫性と先見性、責任感のなさは国民の多くを白けさせているに違いない。
台湾の外交部長は7月22日、海外メディアとの会見で「中国の次の標的は台湾だと指摘されており、非常に憂慮している」と懸念を示した上で、日本や米国など「理念が近い国との協力が不可欠だ」と訴えたが、安倍政権の鈍感ぶりは「外交下手」というだけでは済まされないレベルだろう。