自国通貨建ての国債を発行でき、かつ変動相場制を採用している国では財政破綻は起こりえないので、政府はもっと積極的に財政出動すべきだ。こうした主張をする異端の経済理論「MMT(現代貨幣理論)」が注目を集めている。経済アナリストの森永康平氏は「10年前から『日本の財政は10年後には破綻する』と言われてきたが、いまも破綻していない。この現状が、MMTを実証している」と指摘する——。

※本稿は、森永康平『MMTが日本を救う』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。

一万円札
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現代貨幣理論とはなにか?

MMT(現代貨幣理論)とはどのようなものなのか。MMTでは貨幣を借用書として捉えている。この借用書はIOUとも言うが、これは英語で「あなたに貸しがある」というI owe youからもじったものである。

分かりやすく説明するために、太郎と花子に登場してもらおう。

太郎の庭では夏にスイカが、花子の庭では冬にミカンが穫れる。そこで花子は冬にミカンをあげるという借用書と引き換えに太郎からスイカをもらった。

次に次郎の庭では秋に柿が穫れる。そこで、太郎は花子からもらった借用書と引き換えに、次郎から柿をもらった。この時点で、次郎は冬になったら借用書と引き換えに、花子からミカンがもらえる状態になった。

このように、最初花子が出した借用書(負債)は貨幣のようなはたらきをして、3人の世界でやり取りされ、交換媒体として使われている。

仮に太郎が花子とスイカとミカンを物々交換していたら、どうなるか。交換したタイミングで取引は完了してしまい、貨幣にとって重要な信用や負債という概念は発生しない。しかし、収穫のタイミングがズレることで「スイカという実物に対して、将来もらえるミカン」という、取引成立時点では実物ではない借用書が交換された。ここに2人の間で信用と負債という概念が発生するというわけだ。