日常生活に蔓延する「屁理屈」

さて、これはほんの一例です。

ご存じの通り、インターネットの世界には屁理屈をこねくり回したヘイトスピーチやデマ(フェイクニュース)、そして個人に対する誹謗ひぼう中傷が蔓延しおり、それが日常的な炎上の要因となっています。

今回のコロナショックに関わるインターネットやテレビでの発言も、参考にすべきものも多くありますが、中には勘違いや無知からくるトンデモ意見、そして悪質なデマや恐怖心を煽るだけのものまで、玉石混交の「言葉の洪水」に私たちは翻弄されています。

そして仕事の現場では、パワハラにセクハラ、家庭ではモラハラといった、自分勝手な屁理屈によるハラスメントも、まだまだのさばっています。

ですから、私たちは「乱暴な主張で他者を否定し、押さえつけようとする言葉の暴力=屁理屈」の構造やテクニックを知ることで、そこから身を守る術を学んでいかなくてはなりません。

その代表例が、前述のくだらない議論の発端となった「論点のすり替え」です。

揚げ足取りは「人格攻撃」につながる

この「論点のすり替え」を、皆さんは日常的に目にし、耳にしているはずです。たとえば会議で意見がぶつかった時、「そんな言い方をするからあなたの意見は信用できないんですよ。だいたいあなたはいつも……」というように反論するのも論点のすり替えです。

確かに言い方に問題はあったかもしれませんが、そこから「意見そのものの是非」ではなく「人格攻撃」に論点をずらしてしまうのは、悪意に満ちた屁理屈以外の何物でもありません。

では、なぜ人はこのような論点のすり替えを行うのか。それは当然「議論で優位に立つ」ためです。それも多くの場合、本来の論点では勝ち目が見つからないから、とりあえず論点をずらし、そのことで相手より優位に立とうとするのです。

そして、こうした論点のすり替えは、「揚げ足取り」と呼ばれるものです。前述したBさんも、また例に出した会議での批判も、本来の論点とそれに関する意見の中身ではなく、「表現の仕方」のようなプロセスを問題視し、そこに噛みついているのがおわかりでしょう。

ですから、揚げ足取りのような論点のすり替えは、往々にして「人格攻撃」になるケースが多くなります。