「出版やめて、クッキーでも焼いてフリマで売ってろ」
しかし、「出版とは閉じ込めること」に続けたAさんの次のような発言で、残念ながら「まともな議論」が一気に「くだらない議論」に突入します。
「そんなこともわからないんだったら、出版やめて、クッキーでも焼いてフリマで売ってろ」
このAさんの発言をスクリーンショットで引用し、Bさんが噛みつきます。
「こういう閉鎖的で性差別の発言が感情的な口調で出てくるところが、ザ・日本の出版界ですね」
ここから先は……。はい、皆さんご想像の通りです。当初の論点である「献本お礼ツイートの是非」は置き去りにされ、以下のような外野からの発言が相次ぎ、炎上することとなりました。
「女性編集者とわかってのこの発言は明らかな性差別」
「性差別からくる発言だと俺は思わなくて、単純な職業差別だと思う」
「クリエイティブな行動すべてを蔑んでると感じた」
「クッキー馬鹿にしてるんですか? 謝罪してください」
もちろん中には「女性差別というより、商業ベースにのらない素人商売という意味合いだと思いますけどね」という冷静な意見もありましたが、概ねAさんへの感情的な批判が続きました。
するべきは相互理解を深める質問
私の個人的な解釈としては、Aさんは賞味期限の短い本を粗製乱造することのメタファーとして「フリマでクッキーを売る」と言ったのではないかと考えていますが、もしそうだとしても、うかつな発言であったことは確かです。
しかしながら、まともなやり取りを「くだらない議論」にしてしまったのはAさんだけの責任ではありません。
私に言わせれば、「どっちもどっち」です。
まず、Aさんの問題は何か。
「クッキーでも焼いてフリマで売ってろ」という、なかなかパンチの効いた一節に皆さん注目していますが、それ以上に問題なのが、その前の「そんなこともわからないんだったら」です。
これはつまり、「自分は正しい。お前は間違っている」ということの表明であり、他の議論でもありがちな「マウンティング目的の発言」に他なりません。これでは、相手が見下されたと感じてヒートアップするのも当然です。
Aさんは、炎上した後で「これは文学と社会学の対立」と言い直しましたが、そうであればBさんとはそもそもの立脚点や視点が違うわけですから、そこを議論の中で「自分はこういう視点で」ときちんと説明すべきでした。(個人的には、文学と社会学というより文化と経済の対立だと思っています)
どちらにせよ、結局面倒くさくなってBさんをブロックしたわけですから、最初から面倒くさいことにならないよう、余計なひと言を加えずに、冷静に議論をすれば良かったのです。(あるいは最初からスルーするか)
次にBさんの問題。
これはもう「論点ずらし」であることは明白です。当初の「献本お礼ツイートの是非」という論点から、「性差別」へと論点をずらし、そこから「個人攻撃」と「業界批判」に持って行ったわけですね。
BさんがAさんの発言を性差別と解釈したとしても、そこはさらっと触れる程度にして、たとえば「編集は捨てること、というのが献本お礼ツイートとどう関係するのですか?」といったような相互理解を深める質問をすべきでした。
もしBさんが相互理解を目指しているわけではないのであれば、最初のAさんのツイートへの反論も「議論する気などなく、単に噛みつきたかった」ということになります。