オーバーツーリズムに加わらない

昨年までは、有名観光地に外国人旅行者が押し寄せる「オーバーツーリズム」が社会問題になっていた。住民のみならず、当の外国人旅行者までが「せっかく日本に来たのに周りは外国人だらけ」と不満を漏らした。ニセコや野沢、白馬などのスキーリゾートが引き続きオーストラリア人に人気の一方、近年は東北の温泉地などそのほかのスキー場でも彼らの姿を見かけるようになった。日本旅行のリピーターになると、次は周りにオーストラリア人のいないスキー場に行きたいと、穴場を開拓する旅行者が増えている。

東洋文化研究者で『観光亡国論』(中公新書ラクレ)著者のアレックス・カー氏は、「全国体験観光オンラインシンポジウム」(地域ブランディング研究所主催)で、「新しい旅の哲学」という持論を語った。「自分も迷惑なオーバーツーリズムの一部になるような人気観光地は諦めて、自分が来ることが求められる、行くことが役に立つ目的地を選んで旅をする」という考え方だ。

レジ袋やストローを使わないといった環境への配慮と同じように、旅に関しても受け入れる観光地に混雑マネジメントを委ねるだけでなく、旅行者自身の選択でwithコロナ時代に安心な旅行を考えることが求められるだろう。

カー氏が「完璧なNo密」と呼ぶ徳島県祖谷地方には、9軒の古民家宿が点在する
画像提供=桃源郷祖谷の山里
カー氏が「完璧なNo密」と呼ぶ徳島県祖谷地方には、9軒の古民家宿が点在する

ここは、半額補助だからと張り切って人気観光地、人気ホテルの予約合戦に殺到するのではなく、他の日本人があまり気づいていない穴場を研究して、最終的に満室や満席にならないような、知る人ぞ知る旅行を見つけ出すほうが正解かもしれない。せっかくなら、これを機会に新しい旅のスタイルに挑戦してみる。初めての土地に足を伸ばして、どんな風景や体験が待っているか想像してみる。そのほうが、感染予防に配慮し密を避けるという時代のテーマに沿った旅行を、一人ひとりが安心して楽しめるのではないだろうか。

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