多額の補助金とともに「啓蒙」を進めるEU
ドイツであれ、フランスであれ、政府が電気自動車に熱心なのは、ガソリン車・ディーゼル車vs電気自動車の勝負が決したと見ているからではないか。
電気自動車は次世代の産業だ。投資家の目は、今、電気自動車に向いている。そこには、再生可能エネルギー、IT、AI(人工知能)などさまざまな先端技術も複合的に関与する。つまり政治家は、電気自動車側に付かなければ時勢に乗り遅れる。時勢に乗り遅れれば、将来的に国の産業は衰退するし、何より自分たちの利権が保てない。つまり、電気自動車へのシフトは、何が何でも自分たちの手で推進しなければならない。
だからこそ、どこの政府も伸び悩む電気自動車の背中を、巨額な補助金で押そうとしている。政界と産業界がお金という媒体でしっかり結び付いているのは、古今東西の定めである。言い換えれば、従来の自動車産業は、早急に方針を変え、電気自動車シフトを成功させない限り、政治から見放される危険に見舞われている。
電気自動車普及の道はまだ遠い
ただ、現実としては、新しい方針はなかなかうまく軌道に乗らない。ドイツ政府は電気自動車の購入に補助金を支給しているが、登録されている乗用車における電気自動車のシェアはまだ0.1%にも満たない。仕方なく、補助金の延長も決まっている。
しかし、補助金とは税金だ。つまり、すべての国民が、高価な電気自動車を買える金持ちのために、補助金を負担する。もちろん、そうするうちに需要が伸びて電気自動車の値段が下がり、皆が買えるようになるという楽観的予測はあるのだろうが、道はまだ遠い。さらに不幸なことに、今のところこの補助金の恩恵を被っているのはドイツのメーカーではなく、米テスラ、仏ルノー、日産など、いわばドイツのライバルメーカーなのである。